『春を背負って』

・美しい映像、そして爽やかな映画であった。

・あの『剣岳 点の記』(2009)から5年。黒澤組に仕え、あの『八甲田山』の撮影監督をし『剣岳 点の記』で素晴らしい映像を観せてくれた木村大作が、再び山を題材にした映画を引っさげて戻ってくるのだからこれは観ないわけにはいかない。いや、これは絶対に観たい。それもなるべく大きなスクリーンで。両目の視野いっぱいにスクリーンが入り、映像以外はなるべく観客も椅子も目に入らないようにして、体中が映像に包まれ、どっぷりと映像に浸るように観たい。そんな思いで映画を観たが『春を背負って』は前作『剣岳 点の記』以上に映像の美しさを、北アルプスを、山と自然を、あの場所の空気を感じ取れるような映画だった。正に、自分があの立山の懐に、あの山小屋に、あの空気の中にいるような思いをさせてくれる映画であった。

・そうそうたる役者陣を実際の北アルプスに引き連れ、山小屋での本当の生活を映画スタッフと一緒にさせ、実際に山も登らせ、その姿を大自然の懐で撮影する。下手な演出や演技よりも役者の内面から湧き出てくるものが、嘘ではない気持ちとしてフィルムに写し撮られている。



・出だしの北アルプスの映像がフィルター無しで山の風景を撮ったかのように、青が被っているような感じがしたのだが、これは小屋側のDLPの調整が巧くなかったせいかもしれない。

携帯電話での捜索

キャストと撮影

アルミの匂い

あの空気、雰囲気

蒼井 演技過剰になっている。

滑落の場面や、厳しい山の場面はちと白々しい嘘臭さがある。

挿話はどれもこれも取って付けたようで話に馴染んでいない。



・あの『剣岳 点の記』(2009)からもう5年も経つか。時間の流れは早い。初監督作品で日本アカデミー賞の"最優秀監督賞”"最優秀撮影賞”まで取り、その他の映画賞にもズラリと名前を連ねたのだから大したものだ。それまでは《黒澤明監督映画のカメラマン》《「八甲田山」のカメラマン》とばかり言われた、としか言われてこなかった木村大作に“『剣岳 点の記』の監督”という勲章がくっついたのだからこれは一人の映画人を判断する材料としてかなり大きなものを授かったのだと言える。

・その木村大作が5年の月日を経て“『剣岳 点の記』の監督”という勲章か、はたまた大きな看板をぶら下げてまたやって来たのだから、これはいやがおうにも期待せざるを得ない。しかし・・・・

・5年前の『剣岳 点の記』は映像が本当に素晴らしかった。大きなスクリーンで観ていると、まるで自分があの剱沢にいてあの剣岳の山頂で美しい北アルプスの峰々にの中に居るかのように思えるほど、美しい映像だった。あの美しい大自然の中に自分が包まれている、あの場所に自分が立っているような気持ちになる、それだけで『剣岳 点の記』はいいと思えた。映画の一番大事な部分である脚本が粗だらけだったのだけれど。

2009-06-19日記: 『剣岳 点の記』 山と自然を愛する人に!美しく貴重な一作。

・『剣岳 点の記』は脚本がうーんと言いたくなるところがたくさんあって、一本の作品としてはとても褒められたものではなかった。だが、一先ずそこには目をつぶってカメラマン木村大作の写し撮ったあの美しい映像に心をあずければ、映像を、映画体験を楽しめる、味わえる、心で感じられる映画ではあった。「ストーリーがもっとちゃんとしていたら、本当の傑作になったかもしれない」そう思ったけれど、あの映画はあの映画として素晴らしい体験を観るものに与えてくれる映画として好きだし評価している。

汚し、カメラとキャスティング、