『黒部の太陽』(1968)

・古い映画の特徴でもある赤み黄色みの強い画面の色調はいかにもだなと思うが、レストアされた映像はなかなかの美しさに辿り着いている。

北アルプス立山黒部の雪を抱いた山々の風景等も美しい。場所が近いだけに『剣岳点の記』の美しい映像と重なる。

・トンネルの中で水が噴き出し、丸太と一緒に作業員が流され逃げるシ場面などはかなりの迫力である。CGも何もない当時なのだからそのままの実写で撮影しているのだろうが、これはかなり危険度の高い撮影だったろう。演じている役者にも丸太にぶつかって怪我をした人もいるのではないかと想像するが、ひょっとしたら当時の撮影現場はまさしくこのトンネル堀と同じで危険な撮影は人足と同じく下っ端の役者に割り振られていたのかもしれない。

石原裕次郎が一人岩盤にドリルを突き刺し、遂にトンネル開通に至るシーンはがいい。

・汗臭いであろうヘルメットで酒樽から清酒を酌み分けている場面も一興の趣がある。

石原裕次郎三船敏郎にはふらついたところが無く、ちゃらちゃらした役者の軽薄さが微塵も無い。この辺りはフジテレビのドラマとは格がちがう。というかこの頃の邦画の役者はやはり素地が違うし、気合いも違うのだなと観ていて感じる。映画をとりまく状況の違いが大きいだろうが、今の役者と根っこもちがうし、纏っているものもちがう。

・言ってみればこれも大規模開発であり、自然破壊でもあるわけで、しかも電力会社の一大事業であったわけで、原発問題やその企業体質、政官民の癒着がこれだけ問題になり叩かれている状況なので、今この作品がTVで放映されることにもなにか曰くを感じなくも無いのだが・・・。

・撮影には当時としてもかなりの金がかかっていそうだ、ロケやセットも大規模だし、こういった撮影は『八甲田山』を経て80年代で終わってしまった感があるので、ある意味懐かしくそして羨ましくもある。

・映画そのもの、話しとしてはまあそこそこと言ったところだが。

2009-03-25 日記:TV『黒部の太陽』なかなか骨太で男気に満ちた良作であった。