「洋菓子店 コアンドル』(2011)

・ふん、またこんな映画。と思っていたが、絵が思ったよりいいな。態とらしい光、態とらしい作りなんだが、手だけは込んでる。つまりテキトーなことをしていない。監督や美術の目が隅まで届いている。ライティングはいかにもという感じで態とらしいんだが、それでも何も考えていないような絵よりはよっぽどいい。考えて絵を作ってるというのが分かるからそれだけでちょっと褒めたくなる。
テキトーなことをしていないというのは映画の基本中の基本なんだよなと改めて思う。テキトーなやっつけデタラメな邦画、撮影、映像、画面というのがもううんざりするほど溢れてるから。最初の5分を観ただけで「こりゃだめだな、考えてない。いい加減につくってる」と分かる映画が多すぎるから。

蒼井優は1985生まれということだから、撮影当時は25歳位か?なんか若いような老けてるような???

グルメブームの中、「かもめ食堂」で料理映画が思った以上にヒットすると分かったら、その後はTVも映画も高級料理じゃなくて手に届く範囲のお料理を題材にした”プチグルメ”作品を連発。「南極料理人」「ホノカアボーイ」「食堂かたつむり」・・・・と、料理研究家なんかをアドバイザーにしてお料理レシピみたいな

記憶にあるだけでも「かもめ食堂」と「めがね」は良かったが、その後は・・・

で、またしても人気女優を使って都会のOLの癒し願望狙いの映画かい!と思っていたのだが、これはまんざらでもなく良かった。脚本、ストーリーは可もなく不可もなく。アホPや監督、脚本家があざとく混ぜ込んだウケないウケ狙いのどうしょうもない演出やバカらしい挿話も本筋ではあまり目立たないし。(交通事故の話は邪魔、余計、この映画最大のマイナス点だが)まあなにより映画としての質が良い。カメラ、照明、演出、演技がしっかり”映画”しているからいいんだな、コレは。蒼井優の演技で引っ張っている部分も大きいといえるが、流行りモノを撮って安直に安牌なヒットを狙って映画を作っているんじゃないんだというのが画面から感じるんだな。上っ面だけ、どっかで見たような絵を貼りあわせてテキトーに映画を予算内で時間内で仕上げて作ってるんじゃなくて、この監督やスタッフが”いい作品を作りたい”って熱意、情熱を持って、傾けて、頑張って作っている感じがこの映画にあるんだな。つまり作品に心がこもっている。監督からカメラ、スタッフたち多くの魂がしっかり入っている。そんな感じがするからこの作品はとてもイイ感じなのだ。そこんところが「ホノカアボーイ」「食堂かたつむり」なんかとは大きく違うのだな。

蒼井優の使い方も江口のり子の使い方も実に巧い。二人の役者の個性のいいとこをちゃんと引っ張りだしてる。この役者にはこういう演技させるといいんだってところをきちんと見定めて演出してる。いいじゃん。

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