『モスラ対ゴジラ』(1964)
ゴジラ映画第四作 カラー作品
●本多猪四郎監督のゴジラ第一作を彷彿させるような、開発批判、自然の力に叩きつけられる人間の姿などのエッセンスが盛り込まれている。
●それにしても怪獣映画に小美人二人が出てくるというアイディアは凄い。登場の仕方もなかなか。どうなるのかと胸が時めく。
●ゴジラの顔に凶暴な雰囲気がなくなったのは残念。ゴジラが尻尾を鉄塔に引っ掛けて倒れそうになったり、足を踏み外して城にしがみつくような滑稽なシーンも要らない。作品の中でのゴジラは完全な狂暴、悪キャラに振り切っているというのに、それに逆行する造形やシーンは作り手が迷走してしまっている。完全に凶悪、狂暴なゴジラとしてのイメージと映像をもっと突き詰めればいいのにと思ってしまう。
●完全悪役のゴジラに対し、モスラは怪獣でありながら人類の味方、怪獣を倒す怪獣という構図はいい。人間がゴジラを倒すのではなく、怪獣が倒すというところに決して人間が優れたものではないのだとして扱っている本多猪四郎らしい視点。
●モスラの造形と蛾の動きがかなりリアルだ。ゴジラと親モスラの戦いのシーンは流石の迫力。幼虫モスラが海を渡っていくシーンも良い。
●ゴジラが幼虫モスラによって完全に倒されるというのも驚き。この映画ではモスラがヒーローであり、主人公に匹敵する。だから題名も『ゴジラ対モスラ』ではなく『モスラ対ゴジラ』だったのだろう。
●「我々は人間不信のない、良い世界を作ることだ」というセリフでラストを締め括るのはちょっとお説教臭くてイマイチ。 なんだかメトロン星人が出てきた、ウルトラセブン第8話「狙われた街」(1967)を思い出した。
●アイディアも優れているし、観世物としての面白さもあり、社会批判もありだが、モスラの姿とピーナッツの二人が演じる小美人の部分が際立ったインパクトがあるゆえに、ゴジラ映画というよりもモスラ映画といった方がいい作品になっているようだ。