『おっぱいバレー』(2009)

綾瀬はるかは今まで観たどの出演作よりも綺麗だ。

●だが、このお話なぜか全然面白くなく、詰まらなく、笑えなかった。

●どのシーンを観ても14,5歳の弾けるような若さ、幼さを感じることが出来ない。子供たちの演技力、監督の演出によるところも大きいだろうが、中学生の子供たちの姿が全部大人が指示した演技でかっちり固められてしまっている。

●中学生の姿が全然嘘っぽく感じてしまう。中学生が先生に「おっぱい見せて」なんて言うときはもっとギラギラしちゃってるだろうな、なんて思うし。この中学生たちの全然毒っ気の無さは、監督なんかのイメージで演出されたものであり、リアルじゃないのだ。 ニキビも汗臭さもションベン臭さも泥臭さも鼻水っぽさもこの中学生たちから感じない。綺麗すぎるのだ。

●先輩に殴られて自転車を押してアーケードを帰って来るシーンにも、若かったというか幼かったころの匂いが感じられない。言ってみれば本当に良く有る典型的な定型文的シーンであり、そこに心が揺さぶられない。表面的な演技をしているだけの子供たちしか画面のなかには映っていない。だからなんだか白けてしまう。

●この思いは最後まで続き、未熟で心も感情もこもっていない子供たちの演技を見ていても、感激も感動もしなかった。

●なんだかありきたりのお話、ありきありの状況、ありきたりのシーンをずっと見せられているようで、表面的には明るく輝いているかのようなメッキをしっかり吹きつけられているけれど、全部が全部、類型的でよくあるパターンでしかなく、そこから感動が生まれてくることは無かった。

●唯一良かったのは、万引きをした中学時代の美香子に毎日本を読ませる原田先生との話。そして亡くなった原田先生のお墓参りをしている時、原田先生の奥さんに会い原田先生の家にいき、自分が落書きをした本が原田先生の書斎にあった本だったのだと気がつくまでのシーン。このシーンにはちょっとジーンと来たな。ここをモチーフにして話を展開させたら良い映画ができたかな?と思うほど良かった。奥さんの役を演じた市毛良枝はちょっとしか出てこないけれど映画をきちっと引き締めてくれている。他の役者があんまり良い演技をしていないから、市毛良枝の上手さが余計に強く感じられた。

●今の世の中じゃ中学生がおっぱい見せてくれなんてナンセンスで、おっぱいなんて実際に掴めなくてもパソコンでも携帯でも簡単に見れてしまうから、そういうこともあって設定を1978年に持っていったのかもしれないが、30年も昔の歌謡曲がながれてくると違和感いっぱい。

●この映画は綾瀬はるかファンや、どちらかといえばターゲットが若者向けなのに、三丁目の夕日よろしく古い歌謡曲でノスタルジックな懐かしさを醸し出されても、ん?? と流れる音楽に全く乗り切れないのではなかろうか? 映画が向いている方向と使っている音楽が反作用している。