『姿三四郎』(1943)

黒澤明第一回監督作品ということであったがこれも観ようと思っていてもなかなか観ないで来てしまった一作。

●順当な話の筋で、今であれば良くある時代劇の定番的お話。今から半世紀以上も前、こういうプロットの師弟関係、恋愛、葛藤、対立などはきっと斬新だったのだろう。

●画面サイズが4:3のスタンダードであるから、スピード感のある格闘シーンで直ぐに被写体が画面から消えて見えなくなってしまう。このスピード感を当時演出したことは凄いのだが、システムがそれに追いついていけなかったということなのだろう。パンと組み合って直ぐに画面から対決している二人が見えなくなるのはちょっと欲求不満が煽られる。黒澤明の演出はカメラで追いきれなくてもそのスピード感を重視したのだろう。

●これも面白いか面白くないかといえば・・・ごく普通と言える。それは今の感覚から言うことなのだが、やはり古さは否めない。

●昔見た記憶のある「柔道一直線」だったかな? 柔道の組合や投げは姿三四郎に凄く似ている。きっと手本、オマージュとしているのだろう。

●柔道と柔術の対決のシーンが兎に角、どうもがっしりと組み合ったまではいいのだが、その後の技の掛け合いだとかがはっきりとせず、投げられた姿、倒れた姿で戦いが終わるというのが観ていて不満感が残った。

●ラストで桧垣源之助が倒れて頭を下にして草むらを滑り落ちていくシーンはいかにも黒澤的だなと思わず笑ってしまった。

●DVDのジャケットで姿三四郎が水の中で杭にしがみついてるシーンが使われているが、どうも最初に見たときにこれを水の中に潜んでライフルを抱えている姿として見てしまった。映画を見てはじめて池の中の杭にしがみついているシーンだとわかったのだが、最初の印象というのは怖いものでなんどこのジャケットを見ても姿三四郎がライフルを持っているようにしか見えない。この第一印象も時代の違いが生み出したものなのだろう。

●記念すべき黒澤明第一回監督作品ということだが、まあそこそこな時代劇という感じではないだろうか??