『20世紀少年 もう一つの第1章 』

●2008年8月30日の第一章公開から4ヶ月でのDVDセル&レンタルリリース。しかもそのリリースは第二章の映画公開前日。さらに、同じく第二章公開前日の夜にスポンサーである日本テレビが第一章をテレビ放映。もうここまできたら、かって存在していた劇場公開から6ヶ月毎のレンタル、セル、地上波放送というウインドゥはもうほぼ消滅か。そもそも「デス・ノート」が第二作の観客動員を上げるためレンタルリリースの前に第一作を地上波で流すという離れ業をやってしまったのだから後はなし崩しとなるのも仕方あるまい。

●それにしてもレンタル・リリースと同じ日にTV放送をしたのではレンタルの売り上げには大きく影響するであろ。そういうことを無視しても第2章の公開前日にTV放映することで劇場動員を図ったほうがいいという判断か?というかレンタル・ショップの売り上げなどを確保するよりも出資元のテレビ局としては劇場興行収入のアップの方が大事だということか?

●ハリウッドの映画作品は劇場興行からの収益は全体の15%、残りはソフト販売、TVからの収益になっている。1部には劇場公開と同時にソフトをリリースしたほうが良いという意見まで出ていいる。いずれ日本も似たような状況になるであろう。

●それにしてもこのTV放映版、劇場公開版には入っていなかったシーンも入った再編集版ということだったが、2時間を越える劇場版に対してTV版はCMを抜けばだいたい1時間半の尺。ここまで短くした上で未公開シーンまではいっているのではどうなるのかと思っていたら、案の定、もう劇場公開版のダイジェストのような内容であった。

●何も知らないえいでこのTV版の第1章を観たら、これはなんて詰まらない映画なのだろう。なんて話の筋の通らない中途半端んな映画なのだろうと思う位のぶつ切りの中身だった。これでは第2章への動員は増やすどころか「こんな映画ならわざわざ劇場に行かなくてもいいや」と思わせてしまうのではと余計な心配をしてしまうほどである。

●TV版は劇場版から少々でも棘のあるところ、ナンパだとか暴力だとかそういったシーンを殆どカットし、子供の頃のケンジたち仲間のエピソードを大幅に増やしていた。(不必要と思える位)。いってみればTVのフィルターに掛け、TVのバイアスを加え、このTV版を観た人からなんらクレームが出てこないような作りを目指しているようなものだった。

●正直これでは映画とは別モノと言ってもいい。よくもここまで映画をズタズタに切って不要なシーンを付け足したものだと思う。劇場版の第1章には殆ど出ていなかったカンナが成長した姿もあちこちに挿入されていて、そのカンナがナレーションをして話の筋を説明している。このTV版はもう映画とはまるで別モノであった。

●ケンジがトモダチにレーザーガンの様なものを向けて迫るシーンも、映画版ではガンの先端からバチバチと電気が跳ねていたのに、TVでは何もでていなかった。スタンガンを想像させるからこれも修正されたのか?ETの20周年版では警察官の持つ拳銃が携帯電話に変えられていたがそれと似たようなものか?

●TV局のバックアップ無しでは映画が成立しないような昨今の状況では、どんどん映画もTVの利益倫理に侵食されていくだろう。これまで徐々にそういった傾向は強くなってきたが、この20世紀少年で、もう映画のコントロールはTVが行っているとも言える状況まで来てしまったのかもしれない。

●このTV版を見てがっかりし、第2章を見なくてもいいやと思っても、レンタルでちゃんとした(?)劇場公開版を見ておいたほうがいいだろう。妙チクリンなTV版はストーリーを繋げて展開させていくことを自らぶち切っているようなものだ。