『ええじゃないか』

●1981年 今村昌平監督作品 151分・・・2時間31分・・・長い。

●確かに幕末の下町に生きる庶民の、苦しいながらも頑張って生きていこうとしているその生活を映し出してはいるが、それだけに留まり、ストーリーが発展しない。散漫、あいまい、ぼやけすぎ、結局何を言いたいのか? こういう生活があったということを表現したかっただけなのか?それでは感動は訪れない。冗長と言えるほど長い映画になっているが、脚本段階からテーマを絞りきれず、こんな映像もあんな映像も入れたいと欲張って全部詰め込んで2時間半もの長さにしてしまったのであろう。これは映画としてなっていない。今村昌平黒澤明とは別の独特な、だが味のある映像を紡ぎ出す監督と思うが、この作品は己に自惚れ、映画の本質を見失ってしまった大駄作であろう。

泉谷しげるが若い。桃井かおりも若い。

●幕末の「ええじゃないか」騒動は世の中がひっくり返る間際の、人民暴動でもあったわけなのだが、この映画では”ええじゃないか”騒動は掘り下げられてはいない。「ええじゃないか」騒動は徳川幕府が引っ繰り返ろうとしていた時、武士や権力者の側からではなく、民衆の中から湧き上がった無抵抗、非武装の革命運動であったのだ。民衆の生活苦、幕府への不満、怒り、押さえつけられていたそれらのエネルギーが爆発した日本の歴史の中でも非常に貴重な民衆蜂起であり、革命運動だったのだが、今現在この騒乱を真正面から描いた映画というものが無い。その後の幕末維新、明治維新と繋がる日本変革の重要な事件であったはずなのに。

●絵はイイ。橋のあっちとこっちで生活する人々、その入り乱れる雑多な空気感が絵に見事に出ている。極彩色の赤や青の着物が江戸の下町の市井のごたごたさ、淫雑さ、そこから生まれる底力を感じさせる。この絵だけを見ていたら、やはり今村昌平は凄いと思っていたのだが、話があまりに余りだった。

●DVDの特典映像が何かな?と観てみたら、当時タイアップした紀文の豆乳飲料のCMが3本も入っていた。今では考えられないね、こういうのを特典映像に入れるというのは。「復習するは我にあり」のDVD特典映像でも事件の舞台となった温泉の紹介なんてしていたが、変てこなことをするもんだ。