『豚と軍艦』(1961)

●ここのところちょっと思うところあって昔の監督の作品を見ている。古い作品って見ていないのが多いんだよねぇ。

今村昌平監督は他とは違ってずいぶんと毒があるというか、アウトローというか、右翼か左翼かどっちでも良いが、考え方が非常に極端な感じで、暴力だとか破壊だとか、なんだかそういう妙なエネルギーを持っていて興味深い。

●この「豚と軍艦」という作品も当時の横須賀を舞台としたチンピラ・ヤクザとその男に恋する女の物語・・・・まあ、ありきたり、良くある話しである。

●東京は終戦から立ち上がってこの頃にはもうキレイな都会になりはじめてたんだろうけれど、米軍の軍港でもあった横須賀は、まだこの頃でも町にわい雑な雰囲気が漂い、闇市だとか、売春宿だとかそういう終戦間もないころの雰囲気が残ってたんだろうね。

●この映画の中に映しだされる横須賀の駅や港は、なんとなく今もあんまり変わってない感じがするなぁ。建物は増えているけれど。

●DVDのジャケットで膨れ面してしゃがんでいる女性が当時新人として華々しくデビューした吉村 実子ということだが、このジャケットの写真、ものすごぉく宮崎あおいに似ている。というかソックリ。宮崎あおいがふくれ面してたらまったく同じ顔になるんじゃないだろか(笑)

宮崎あおいは、今ほどメジャーになる前には沢山のマイナーな邦画に出演していたから、何も知らないでこのジャケットを見たら「あれ、こんな映画にも宮崎あおいが出てたんだ」なんて思っていたかもね。

●作品自体は、面白くはないねぇ。この頃の横須賀の、なんとか這い上がろうとしている人間の発する熱気のようなものは感じるが、話しは面白くない。ちょっとこれは流し流し観ちゃったよ。

今村昌平がオリジナル脚本で挑んだ作品ということだが、これに関しては色々なアイディアを詰め込んで、勢いで突っ走ってはいるけれど、映画としてまとまりきらず、なんだか良く分らないねぇ、だからどうしたのよ?という作品になってしまっている。

●こんな映画があったのだという勉強にはなるけれどね。

●安保などもあり、横須賀ドブ板通りでの撮影が許可されなくて、町並みのセットを作ったということだが、これも時代を感じさせるエピソードである。

●今村作品で今後観てみたいものは「にっぽん昆虫記」「キューポラのある街」(脚本)「神々の深き欲望」「ええじゃないか」「楢山節考」「うなぎ」「赤い橋の下のぬるい水」か? まだまだ多いなぁ観てないのが。「黒い雨」はずっと前に観ているけど、これは今村昌平的なアナーキーな感じはなかったな。流石の今村昌平井伏鱒二作品をあれこれいぢくるわけには行かなかった? 非常に真っ当な一作だった。「カンゾー先生」は麻生久美子の全裸水泳位しか覚えてないか?(-_-) 

●この監督は破裂しそうな位のパワーを中に秘めてる、そこが面白さであり魅力なのであろう。