『ボイスレコーダー ジャンボ機墜落20年目の真実』

○真実の重さ、映画の完全なる敗北 

●TBS2007年2月18日の再放送を観た。

●本放送は2005年8月12日御巣鷹山のジャンボ機墜落から20年目のその日だった。

●ドラマの構成として当時の実際のニュース映像がストーリーに織り交ぜられている。墜落現場の様子、遺体安置場所、遺族の姿、インタビューなど。まさにその真実のインタビュー等は半端な気持ちで見ることの出来ない重さだ。

●非公開とされる事故機のボイスレコーダー音声が、特殊な形で事故から長い年月を経て一般に公開(漏出)する。それは事故の原因を知りたいと願う遺族の心にほんの少しだけその心の影を取り除く。

●実際のボイスレコダーの音声の公開は事故から15年後

●実際のニュース映像を交えたこの作品は迫力がある。竹中直人もいつものアクの強い演技ではなく、どっしりとした演技をしている。

●映像としての新しさや目立った演出などはなにもない。だが、一度見始めるともう目が離せなくなる。それは、この映像の裏に、あの世界最大の航空機事故が実話として大きく横たわっているからだ。その真実を知っているから、その真実を映像の中にだぶらせて見るから、フィクションには到底達することの出来ないストーリーの重厚さと、迫真さがこの映像には宿っている。

●いかなる高度な演出をした映像の極地である映画でも、真実を追った作品には敵わない。妙な演出も演技も必要ない。真実が役者に乗り移り、観客は役者を通してその真実の激しさと重さを感じ取る。そして、映像の中からには言葉でゴタゴタ論評などできな、出来ようもない哀しみと感動が伝わる。

●これは真実をベースにした映像作品の強さだ。いかなる脚本術も、演出術も映像術も、真実の重さにはかなわない。真実の重さが宿っていれば、そんな技術など何もなくても、観るものの心を大きく揺さぶる。

●これは真実に対する映画の完全なる敗北であろう。

●2008年山崎豊子の「沈まぬ太陽御巣鷹山編が遂に映画化され公開される。かって、故徳間康快徳間書店傘下の大映で映画制作を発表したが実現しなかった。それが徳間 康快亡き今、大映を傘下に納めた角川映画の元で製作され公開される。はたしてあの大事件を、あの多くの人の凄惨な死を、その家族の哀しみをどう映画化するのか。期待と同時に大いなる不安もある。

●だが、願わくば、日本映画に残る素晴らしい作品となり、世界中に公開され故の悲劇を一人でも多くの人に伝え知って欲しいと思っている。
動画:ボイスレコ一ダ追記:2011年春、FC2動画にこの番組の全編がアップされている。(ボイスレコ一ダ
TV局側はこの動画の削除は依頼せず、一人でも多くの人が、何年先でもこの番組を見る事が出来る状態がずっと続いて欲しいと思う。


関連日記
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