『ダイ・ハード4.0』 

●第1作目の公開から19年、第三作目の公開からでも12年。5,6年の前は毎年「今年はダイハード4の製作が始まる」と言われ続けていたが結局話しは進まず、いつになるのかねと思っていた作品。もう待ちわびたというより期待の旬は過ぎてしまっている部分もある。

モニカ・ベルッチが過酷な戦場を逃げ回っているのにシャツのボタンだけは胸元より下まで外して巨乳アピールを続けるという大笑い映画「ティアーズ・オブ・ザ・サン」にブルース・ウィリスが出演しているが、作品としてはこれがダイハード4になる予定だったとか。でも余りの脚本のよさに(どこがと思うが?)ダイハードの続編という案は流れて単体の作品として公開された・・・・まあこれがダイハード4でなくて良かったわけだが。

●映画の現代は「LIVE FREE OR DIE HARD」これを日本公開用にダイハード4とするのかと思っていたらなんとダイハード4.0だったので笑った。日本の配給会社はかっては素晴らしい邦題を付けることで有名であったのだが、最近では原作の題名を日本語に変更することを嫌う製作サイドのプレッシャーが強くてなかなか邦題をつけられない状況にあった。殆どの外国作品が英題のカタカナ読みを邦題としてしまっていた。嘆かわしいことだ。しかしそれ以上に嘆かわしいのはWeb2.0にあやかってさも新しさを出そうとしたのかダイハード4.0としていること。流行りを取り入れるのが宣伝の定石とはいえこれはまったく知性の感じられないただの流行りに乗ってやれ的な題名の付け方で嘆かわしい。(docomo2.0も全然失敗してるというのに)

●映画は流石FOXのドル箱、看板タイトルだけあって、駄作は送り出せないからと相当練りに練ったミスや破綻のない超優等生的内容に仕上がっている。観ていて疑問に思うところや、なんだこれは? というような破綻、つじつまの合わない部分はほぼ皆無。実に徹底的に鍛練された脚本であろう。一体何十回書き直ししているのだろう?

●カメラワーク、構図、CG,アクション、編集、演出どれをとっても、最高レベルのハリウッドスタッフが妥協せずにありったけの能力と才能を搾り出して作っているという感じがひしひしと伝わってくる。ほとんど文句無し。

●130分もの長い作品でありながら、一度も時計を気にすることが無く、演出は飽きさせない工夫がされているし、テンポの良さも秀逸。

●テロリストが電波ジャックをして全米のTV画面にメッセージを流すシーンで、これまでの歴代大統領のスピーチを繋ぎあわせてメッセージを作っている。レーガンや、クリントンをちゃかして使うのは他の映画にもあったが、現大統領のブッシュまでおちゃらけに使っているのが面白い。FOXはどちらかといえば系列のFOXTVチャンネルの内容から言っても、現大統領ブッシュ派であり、意図的にブッシュ政権を持ち上げるような報道を繰り返している企業だ。中東での戦争もFOXはブッシュのやり方を擁護しイラク派兵も応援している姿勢であった。その同じFOXが自社のドル箱映画の中でブッシュをコケにしている・・・・・これは不思議、というか面白い? アメリカ的には系列企業で政治思想が一枚岩である必要などないということか? 日本なら親会社の政治的思想的スタンスは下々まで強要される気がする。

●マギーQは『M:i:?』で美人の正義方のスパイであり、かなり注目されたが、今回は逆に悪役テロリストの一味。美貌で注目を引く上にアクションも凄い。最後は炎の中に突き落とされて焼け死ぬという役だが、この映画の中では一番に目立った存在かも。

ブルース・ウィリス以外の役者はハリウッドの中では2流、3流の格下役者がほとんど。ブルース・ウィリスの出演料が高過ぎるので他の役者は安いところで揃えたということだろう。

●話しは最初から最後までノンストップ・ジェットコースタームービー。テクノロジーの進化したCGIのお陰で、どこまでが肉体を使ったアクションで、どこからがCGIなのかはほぼ見分けるのが不可能。まあ、よくもここまでやるよというようなシーンは全てCGIなのだろう。

●ラストで敵役のテロリストをやっつける方法がこの作品ではかちょっと拍子抜け。途中までのバトルが物凄さの連続だったので、最後の最後はこれまでの1,2,3と同じようにドカーンと思いっきり大きな花火を打ち上げて「よし!やった!」という感じになるのかと思っていたら割とシンプルに、大仕掛けもなく、バーンという拳銃一発でトドメを刺してしまった。んこれがなんかイマイチ。エンターティメント映画としてはほぼ100点満点なのだけど、このラストが減点。