『バッテリー』 

●うーむ、原作は800万部も売れているって?全然しらなあんだ。最近読む本も偏ってるし、小説は古いのばかり読んでるし。でも800万部とはすごいな。それを全く知らない自分もなんなんだかと言う感じだが。

●ということでまたもいつものように事前知識何もなしで見た映画。最近の映画はマンガやアニメ、小説などの原作物が圧倒的に多いのだが、その殆どを知らないと言う自分がまた不思議でもある。いつも「何々の原作」と言われてもピンと来ない。まあだからこそニュートラルな気持ちで映画その物に向きあえるのだと思うが。

●いつからとはっきりは覚えていないが、この映画の予告編は大夫前から劇場で流れていたと思う。「これっていつ公開かな?」なんて思っていながらいつまでも公開が決まらず結局3月という時期になりようやくという感じで公開されたという感じがある。大ベストセラーの映画化という割には宣伝も目立たず、公開時期も決して良い頃合いではない。(春休みの親子連れをねらったのだろうけれど?)

●主役の投手を演じる林遣都 はこの作品が映画初主演ということだろうが、特徴のある目つきがかなり印象的。

●岡山が舞台となっているということだが、画面に繰りだされる絵は非常に美しい。そしてある種の懐かしい空気感を絵のなかに漂わせている。グラウンドの土ぼこり、野山の緑、ユニホームの白さ・・・・・美しく映像に取込まれている。これは見ているだけでも心癒される感じだ。そしてこの映画には誰しもが心のなかに持っている「あの夏」の感じが切ないほどに感じられる・・・・・これはひとえに監督とカメラマンの心持ちの高さの現れであろう。

●役を演じる少年達の目が眩しいくらいに輝いている。演技だ!というあざとらしさは感じられレない。絵のなかの存在そのものが十二分にキラキラしている、そして爽やかだ。

●たかが中学生のクラブ活動でありながら、人間関係の確執や学校制度の猥雑さのなかで翻弄されるという部分が単純な青春野球ものではないぞ、奇麗事ばかりではないぞといわんがごとく巧く描かれている。その点でも作品の深みと監督や脚本家社会的なメッセージもひしと伝わる。

●テーマ曲が作品に非常に合っていて、美しく優しくちょっと切ない。熊木杏里「春の風」映画のテーマ曲とはこうあるべきだろう。

●ホントのことを言うと話しはこれもしり切れトンボである。ラストでは病気に苦しむ弟、強豪にたいして真っ正面に野球で戦う投手と保守、そして仲間の回し撮りで終わってしまっている。なんら明白な終わり方はない。話しの途中でふっと切られたような感じだ。そういう意味では映画としてはこれもダメなのだが・・・・最初から最後までなにか切なく温かく涙が流れるような独特の雰囲気がこの作品に漂っている。

●ダメなラストなのに、なぜかテーマ曲が映像に重なって流れてくると涙が浮かんできた。悲しい涙ではなく、なにかジーンと伝わってくる人の心にこだまするようなそんな何かを感じさせる映画だ。とにかく爽やかさはダントツである

●だから、私はこの映画が好きである。いかにも文部省推薦がなるほどねぇと思える映画だが・・・・良いのである。なぜかなぁ?でも見るべき価値はある。こういった映画は少ない。