『キング・コング』 

●「ロード・オブ・ザ・リング」三部作の監督ピーター・ジャクソンが遂に取り組む往年の名作リメイク。
ロード・オブ・ザ・リング」三部作のあのクオリティー、CGIの凄さ、果たしてピーター・ジャクソンは一体どんなキング・コングを魅せてくれるのか?? 超期待の一作・・・・であったが。

●異なる意見もあるであろうが、自分としてはキング・コングは未知の島で捉えられ、人間社会に引き連れられ、そこで人間社会、文明との衝突を起こす、自然に生きてきた動物であるキング・コングが自然の中に後から発生した反自然的な人間社会のなかでどう動くのか、人間社会はどう対応するのか、そういったところがテーマであろうと思っている。

●だが、今回のキング・コングは3時間を越える長い映画の内、大部分がキング・コングの島スカル・アイランドでの話しに集中している。言って観れば映画が始まってずっと、延々と島の中での話しである。

●そこで見せつけられるのは殆どがキング・コングが主役の、まるで怪獣映画である。ピーター・ジャクソンは自分のCG会社ヴェータの実力をロード・オブ・ザ・リングに続いて最大限に発揮しようとしたのであろうが、これではキング・コングという過去の名作の作品的、ストーリー的リメイクではなく、CGI満載のモンスター映画を作っているとしか思えない。ナオミ・ワッツとのロマンスもあるにはあるが、それすらもCGIの見せびらかしに感じてしまう。

●最大級に自分として嫌であったのは、洞窟のような所に落ちた人間に巨大が昆虫が襲いかかり殺していくシーンだ。はっきり言って、これはもう気持ち悪いの極限である。毛虫やムカデの巨大なものが、CGIのレベルが高いものだから本当にリアルである、よって本当に虫のようで今思いだしても本当に気持ち悪く、もう最大級に不快な映像である。こんなものを長々と見せつけられて、もうこの映画には嫌悪感すら抱いてしまった。

ピーター・ジャクソンキング・コングという怪獣を、スカルアイランドに生息する恐竜や爬虫類、昆虫などのいろんな生物をCGIでリアルに描きたかっただけなんじゃないの? 昔のぬいぐるみじゃなくてね。あのストーリーの内面に潜む文明批判とかそういう部分には目が向いていなかったんじゃないの?いやそれもあるとは分かっていたけれど、やりたかったのは、主眼を置いていたのは怪獣を描くことだったんじゃないかね??

●人間社会に連れてこられてからの話しはサクサク進み、あっさりとラストに向かっていく。簡単すぎるでしょうこれじゃ。

●ラストのカール・デナムのセリフは愚の骨頂。「Beauty killed the beast」を「美女が野獣を殺した」・・・これを聞いたときは座席からのけ反って「どうしょうもない・・・」と叫びそうになった。もう「ばかげている」と。

●映像表現にばかり注力しすぎ、肝心のストーリーの欠落に気が付かなかった失敗作だと思う。リアルな映像が逆に気持ち悪すぎ、生理的に拒否したい大嫌いな作品である。たぶんもう二度と見ないでしょう。

注)ラストの「Beauty killed the beast」を「美女が野獣を殺した」が語訳で、「美しさが野獣を殺した」とし、美しさというのがキング・コングの心の美しさだとすべきだとか書いてある評も見たのだが、それは異常な深読みしすぎと思う。まあ人によって捉え方はそれぞれだが、妙に深読みするのは曲解と等しいと思っている。

goo映画『キングコング』:http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD7597/
ぴあ映画生活キングコング』:http://pia-eigaseikatsu.jp/title/13587/