『君を忘れない FLY BOYS,FLY! 』(1995)

・日テレの力もあるであろうが、よくぞまあこれだけテレビによく出る顔を集めたものだ。

・公開当時、ロン毛の木村拓哉やら、でぶでぶの松村やらで散々に言われていたのを記憶しているが、なるほどこれは誠にもってトンデモ映画の超典型。これは特攻という日本がつきすすめた愚かな行為、そこにまつわる苦しみや悲しみになんら手を差し出してもいない、心を向けてもない。利用しているだけだ。

終戦50周年を記念して1995年には戦争を題材にした映画が何本も公開されというが、この映画は終戦50周年という歴史的に重要なひと区切りの年に、殆ど戦争のことなども考えず、終戦50周年という話題に軽々しく、ちゃっかり、ぬけぬけと、狡く、傲慢に、薄汚い心情で、当時の状況や戦争や特攻隊に参加した若者やその家族、恋人、友人の苦悩や悲しみになど思いを寄せることもなく、終戦50周年や戦争、特攻というものを映画のただ単に映画の具材として、総菜として利用し、話題に便乗して話題になるキャスティングだけをして、そして映画という形だけを設えて、観客を呼び込んで金儲けを狙った製作者、製作社、そこに関わりこんな映画にゴーサインを出した人間たちの、おぞましい、汚れた汚穢の塊のような映画ではないか? ラストシーンの空を観ながらそんな思いがわいてきて、極めて胸糞が悪くなった。

・少し前に『ショック・ドクトリン 災害便乗資本主義」という本が出たが、言って観ればこの映画も、不幸や悲劇、人の悲しみや苦しみに便乗しそれを利用して金儲けをしようとした、吐き気をもよおすような便乗ビジネスの一つとして捉えられるであろう。

・それにしても脚本も酷い。所属している軍の上司が父親だとか、売春宿の女と懇ろになり好きだ、愛しているだとか言い出すだとか、まあなんともお決まりの、見飽きたような設定を入れていたり、なんともはやといった脚本だ。脚本:長谷川康夫・・・『山桜』以外はちょっと??という脚本が多いか?