『リアリティー・バイツ』(1994)

ウィノナ・ライダーはこんなにキュートで可愛いい女優だったっけ? と驚くくらい可愛い。ウィノナ・ライダーは日本人受けするタイプの顔だと思うが、どうも活躍はパッとしていない。あの映画とあの映画に出てたなという程度の記憶であり強烈なインパクトがないのがちょっともったいなくもある。万引き事件だなんだで最近はさらに顔を見ることも遠い感じがする。

●監督がベン・スティラーだとは全然知らなかった。どうもベン・スティラーはちょっとドロッとしたブラックコメディーの役者というイメージが強く、この作品を作っていたなんて寡聞にして今更知った。映画の中で本人が「ユダヤ系の宗教やってるように思う」などと喋っていたが、確かにベン・スティラーの癖のある顔作りはユダヤ系か。それにしてもこんな青春映画を作っていた時期があったとはなぁ。「メリーに首ったけ」や「トロピック・サンダー」「ナイト・ミュージアム」などのダメ男、ドタバタ下ネタギャグのコメディアンの印象が強すぎるから「リアリティ・バイツ」とイメージが結びつかなかった。若い頃はこういうシリアスな作品を創りたいと燃えていた映画マニア、オタクな青年だったのだろう。だがそっちの需要は少なく、コメディアンとして顔が売れてしまった今、ジェネレーションXの映画を作っていたなんて驚くばかり。

BMWよりインフィニティーを買う方がステータスが高い。いや、フォードを買えよ!など15年前の世の中を思い出して笑ってしまう。その頃日本はバブルがちょうど弾けようとしてた頃だった。

●良い大学を出ても良い就職先はない、大卒女子の就職は土砂降り、男も同じ。大卒でGAPの店長。なんか今の日本の状況に似ている気がする。それにしても実際のブランドをこんな感じで卑下して映画の中で使ってよく大丈夫だったものだ。いや、GAPはもともと低価格を売りにしてるんだから何を言われようがそんなの関係ない映画で安っぽい職場だと言われようが全然大丈夫と余裕の態度だったのだろう。

●作品の内容としては、よくある日本のトレンディー・ドラマみたいなもの。大学を卒業して、就職も上手くいかなくて、恋愛もなんだか素直になれなくて、ギクシャク。最後にはまあハッピーエンド。ジェネレーションXを描いていると言われているけれど、その苦しみだとか苛立は表面的に登場人物に被せられているだけ、何をどうしていいのかわからない、社会に対する不満、その叫び咆哮がこの映画の中で描かれているわけではない。二十歳過ぎの男女が世の中のこともまだよくわからず適当に犯行してはみ出して、借りてきた理想は言葉として口に出すけどピヨピヨ騒いでいるだけという状況。

●なんとなくあの頃そうだったなぁと思いだすような、世の中のことなど何も知らなくてただお馬鹿で、周りを取り巻く状況にイラついて怒ってばかりいたこんな時代もあったよなぁと懐かしむような映画といえるだろう。

●描かれていることは浅くて軽薄であり、どこにでもどの国にでもよくあるパターンの恋愛映画、青春映画という域に留まる。

●これは日本のトレンディー・ドラマとほとんど同じ。まあその手のパターンが一番大衆受けする最大公約数的要素が大きいから多くの人は「なんかよかったね」と思うのだろうけれど、強烈なインパクトは持っていない何年経っても繰り返し作られていく映画の典型的パターンのといえるだろう。

●ビッグ・マウンテン「Baby I Love Your Way」など当時を思い起こす懐かしい曲が流れるのは悪くない。

☆ジェネレーションX  quote from WIKI
・アレン・ギンスバーグ「咆える」
アメリカ合衆国で、1960年から1974年までに生まれた世代
ケネディ政権の時代からベトナム戦争までの時代に生まれた世代。
しらけ世代や新人類のアメリカ版に相当する世代。ベトナム戦争の最中から終結直後にかけての時代に10歳を迎えた。生まれた時期はテレビの爆発的な普及が始まった時期であり、キューバ危機やヒッピー運動の時期に一桁台を過ごした。そして、ヒッピー運動の衰退とベトナム戦争終結による「しらけムード」の中で10代を過ごした。
・成人する1980年〜1994年にかけては冷戦末期からソ連崩壊の時期であり、ジャック・ウェルチを初めとする大資本家が「リストラ」「ダウンサイジング」と称した整理解雇ブームを惹き起こした時期であった。この為、ジェネレーションXは軒並み就職難に遭遇した。尚、チリなど南米諸国の同世代も、1980年代の「失われた10年」に遭遇した就職難の世代である。