『007/慰めの報酬』

●のっけからハイスピードのカーチェイス。正直ここまでハイスピードであれこれ動いてると「なんだか良く分からん。」という感じもしないではない。前作の冒頭の人間対人間の追っかけシーンは凄かった。今度は車か!と思ったけれどやはり人間の方が凄かった。

●「007/カジノロワイヤル」が余りに素晴らしい出来だったため、この続編は果たしてどうなるのかと期待と不安があったのだが、決してレベルの低い作品ではないのだけれど、充分に面白くスリルもあり、エンターテイメントとして楽しめるのだけれど、やはり前作と比べてしまうと落ちる。

●最初に流れるテーマ曲もイマイチ007に合っていない感じ。

●前作で最後に死んだヴェスパー。彼女を死に追いやった人間への報復という個人的な気持ちを切り捨てられないボンドという設定なのだが、それとカミーユの報復がなんだか重ならない。カミーユの報復の話は本人に語らせてそれで終わりだったが、もっとここを深堀すればボンドの持つ怒り憎しみと、カミーユの持つ怒り憎しみ、そして二人の報復の思いが一つになる感じがしたのだろうけれど。

●ホール・ハギスの脚本ということで大いに期待したが、なんだか妙に複雑にしすぎて分かりにくいストーリーになってしまっているようだ。そういった分かりにくい部分の回答をMやらボンドやらにチョロットセリフで語らせるだけで説明しちゃっているというのもどうだろう。

●折角捕まえたミスター・ホワイトに尋問をしようとしていたら、MI6に内通者がいてそれがその場に居たMの側近だったとか、ミスター・ホワイトは逃げて堂々と生きているし。CIAの南米支局の男がドミニク・グリーンと通じていたというのに、降格しただけなようだし。なんだかなぁという展開が多すぎ。というかきっちり映像でストーリーを語っていない部分が目に付く。誰かに喋らせてそれで話しに整合性を取ろうとしている部分が何箇所もある。

●ラストでヴェスパーを操っていたという元彼を捕まえるわけだが、これも前々の段階的ストーリーが無く、いきなりボンドが部屋に居るというのもストーリーが短絡的すぎるではないか。

●この作品にはヴェスパーが一切出てこないが、どうもアクションシーンばかりが目立ち、ボンドのヴェスパーへの断ち切れぬ思いというのがまるで感じられない。

●単純なアクション映画としては充分以上なのだが、傑作ともいえる前作からの続きのストーリーとしては気持ちの深堀が全然されておらず、ジーンとくるものも感動もなかった。

●かなり残念。