『スーパーマン・リターンズ』 

●懐かしいテーマ、誰でも知っているヒーロー。アメリカといわず、日本ででも温度の差こそあれスーパーマン仮面ライダーウルトラマンとはまたちょっと毛色の違う正当なスーパーヒーローだろう。

●何十年ぶりの続編ということで、またハリウッドのネタ切れ、続編偏向、安杯主義の映画になっていないかと心配であったが、実にまっとうで実に正当でホントにエグさのないまっすぐな映画と言う感じだ。

●主役俳優のスーパーマンへのはまり具合も驚くほど。これほどぴったりの人物をよくぞ見つけたものだ。

●恋人のロイス役であるケイト・ボスワースもまだ幼さの残る女性というかんじで実に好印象。日本人好みの顔つきだと思う。ブルークラッシュの女の子が大抜擢だな。

●割と観客の疑問であるところ、痒いなぁと思っていたところにハッキリした回答を出しているのも面白い。

●たとえば銃弾の嵐を浴びても体中が弾をはじき返すというのは普通に良く分かるが「じゃあ、銃弾が目に当ったらどうなるのだろう」なんてことは多分大多数の人が意地悪に考えている事だと思う。自分自身も子供の頃そんなこと思っていた。

●この映画のなかでは銃弾がそのままスーパーマンの裸眼に向かって突き進んでいくシーンが有る。わざとスローモーションで演出してるけど、このシーンは目茶苦茶ドキドキ!そう!それってずっと疑問だったんだ、ちょっとスーパーマンの強さに対する曇が掛かった部分だったんだ。でもそのドキドキはもう全く当たり前にだけどスカッと疑問とともに吹き飛ぶ。スーパーマンの裸眼に当った銃弾は体にぶつかった銃弾と同じくパーンとはじき返されちゃうんだから。これってほんとにようやくやってくれたなぁーと拍手したくなってしまった。

●全体的な構成ももうストレートそのもの。クセもなく期待以上の大スペクタクルもなく、優等生的な映画。

●それもこれも監督であるブライアン・シンガーの良くも悪くも雇われ監督的才覚がなすものだろう。

●X-MENシリーズは同じくアメコミの代表作だが第1作も、第2作も私的に言えばCGの見せ場は色々作ったけれどなんとも普通の演出で驚きとかが全然ないつまらない映画であった。ブライアン・シンガーは作家性とか個性の強い監督ではなく、与えられたことをそつなくこなしていくようなそんな監督だなと思っている。そのシンガーがX-MEN3の監督を断ってスーパーマン・リターンズの監督に寝返ったということはX-MENの最終話には良いことだったと思う。3作ともあのつまらなさで続けられたらたまらないと思っていたから。

●でもそれがスーパーマンの新作の監督をするとは・・・・・がっくりしたのだが・・・・このアメコミの超正当、余計なエグさやアクを入れることは許されないこの作品を作るには、つまらないブライアン・シンガーという監督は悪くない選択だったかも知れない。

●ラストで案の定、ロイスとの間に子供が出来ていることをしり、そして父であることを寝ている子に語りかけるというオチ。

●今のアメリカでは父権の喪失、家族の崩壊なんてのが大問題になっているからこそ、こういうステレオタイプ的なストーリーと演出は有る程度必要なんだろうね。

●五月蝿い監督なら自分の考えは違う、そういったありきたりのシーンを入れることは嫌だとか言いそうなものだが、雇われに徹する監督ならスタジオとプロデューサーのご意見にハイハイと素直に従うんだろうね(私的な勝手な思い込みだけど・・)

●ま、超優等生的映画として85点とかだろうけど、テレビのシリーズモノという感じかな、強烈に心に残る何かは無し。まあそれでいいのであろう、スーパーマンは。