『ボイスレコーダー〜残された声の記録〜ジャンボ機墜落20年目の真実』

日航123便墜落の本当の原因は闇に葬り去られるのだろうか? 真実を知る(隠す)人間は、口を閉ざしたまま墓場の中までこの事故の本当の原因を持っていくのであろうか? 心の中に真実を押し込めてあの世までいっていまうのだろうか?

●梅雨が明け、ギラギラとした太陽が肌を照りつけ、額や首筋から汗が吹き出る季節になると、事件を思いだす。今年は特に映画版「クライマーズ・ハイ」の公開もあり、まだ夏の暑さを感じる前から日航機事件の事は頭の中に感じていた。事故から今年で23年目。世の中の多くの人にとってもう事故は遠い過去の事、そんなこともあったのだ、という位になっているのかもしれない。だが、あの当時ニュースや新聞であの事故を見ていた者にとって、あの事故は忘れらることの出来ない人生の中の大きな衝撃である。
日航機墜落事故関係のTV番組は他にも色々あるが、録画され手元にあるものはこのTBSの物のみだ。一部の映像はYouTubeで分割されてはいるものの今でも見ることが出来る。こういった映像をもっと簡単に多くの人が見ることが出来るようなシステムが生まれればいいのだが。それはネット上の配信という形で充分なのだから。

●日本の夏、八月は大きな歴史的事件が重なっている。8/6広島原爆投下 8/9長崎原爆投下 8/12日航機墜落 8/15終戦記念日 これほど大きな哀しい歴史事件が続いている、それが日本の8月なんだと改めて実感する。

●実話に基づいたこのドラマは、所々に実際の事故の映像、遺族のインタビュー、残された家族のその後の姿などを交えていて、何度見ても目の端nに涙が滲んでくる。

日本航空が発表した文字資料としてのボイスレコーダーの声。機長の「どーんといこうや」という言葉は、機長に対する多くの批判の元となった。524人の乗客、乗員が死への恐怖に脅えているときに「その言葉は不謹慎だ」「どういうつもりだ」と。その批判は”遺族”である残された家族にまで及ぶ。マスコミの報道の在り方、その報道から受けた情報で暴走する人間の愚かさ、そして当時の日本航空の対応の酷さ。そういった中で事故から15年もの間、父親を無くした哀しみと非難中傷の目の中で生きてきた家族の苦しさ。それは想像を遥かに越える苦難であったであろう。

●2000年8月、事故から15年が経過した夏。長い長い年月を経て、ボイスレコーダーの音声が公開される。それは流出という特異な形で。

日航は事故から14年経過した1999年11月にこの事故の関係資料を廃棄していたという。だが、誰かがそのボイスレコーダー音声のコピーをマスコミに流した。流出させた人物が誰ということは分らない。(ドラマでは日航の職員となっている。)真相は不明だ。だが、それは真実を少しでも公にしたいという一人の人物の良心の呵責から起きた、小さな奇跡だったのかもしれない。

●このボイスレコーダーの音声により、機長の「どーんといこうや」の声が、コックピット内で必死の努力をし続け、それでも機体の制御が効かず、目の前に山並みが近づいている中で機長がコックピットのクルーに掛けた、最後まで頑張るんだ!という励ましの叫びであったことが明らかになる。

●15年の時を経て、御巣鷹の尾根に登る機長の妻に、慰霊のお祈りを終えて下山してきた遺族であろう老人が声を掛ける。
「機長の奥様でしょうか」「機長は最後まで頑張ってくれたんですね。有り難うございます」と・・・・・。
そして、長い間苦しんできた心はこの遺族の言葉によって解放される。

●ドキュメンタリー、真実とドラマを組合わせた構成は見事である。何度見ても心は揺さぶられる。

●ネットの情報を参考にすると、TVの映像だけでも他にもまだ幾つかある。全てに目を通しておきたい気持ちになる。
☆『思いをつづった文集-あの日を忘れないで-日航機事故 20年目の遺族』NHKNHKスペシャル」2005年8月12日放送。
☆『ドキュメント05.「あの夏…御巣鷹山日航機墜落それぞれの20年」』日本テレビNNNドキュメント」2005年8月14日(深夜)放送。
☆『ボイスレコーダー〜残された声の記録〜ジャンボ機墜落20年目の真実』TBS 2005年8月12日放送。
☆『8・12日航機墜落事故 20年目の誓い〜天国にいるわが子へ〜』フジテレビ「金曜エンタテイメント」特別企画・2005年8月12日放送。2007年12月15日
坂本九没後20年ドラマスペシャル『上を向いて歩こう 坂本九物語』テレビ東京
☆「メーデー!3:航空機事故の真実と真相」第3話「御巣鷹の尾根」ナショナルジオグラフィックチャンネル
★「墜落 日航機事故調査報告」1985.12.15 NHK特集 時の記録選 

●たぶん、自分はこれからも何度もこの映像を見るだろう。事故を思い起こす度に、夏が来る度に。

●誰かは分らぬ事故関係者の大きな決断でボイスレコーダーの音声は明るみに出ることとなった。だが、事故の真相は闇の中だ。もう既に23年も経つ。闇の中に押し込められた真実が白日の下に晒されることは・・・・・ないのだろう、か・・・?

ボーイング社、アメリカ政府、日本政府、日本航空事故調査委員会による事故原因の隠蔽。すり替え。航空機の産業を擁護しようとしたボーイング社とアメリカ政府による真実の隠蔽と替わりの事故原因の捏造。それを受入れた日本政府、日本航空事故調査委員会

●後部圧力隔壁の破壊による急減圧がなかったことは、事故当時の機内写真、乗員乗客の様子からほぼ明かなのではないか? 高度数千メートルで急減圧があれば、機内には白煙が生じ、急減圧と空気の薄さで温度はマイナス数十度に低下し、減圧の影響で乗員乗客は意識を失うだろうと言われている。だが、事故調査委員会はその件に関してコメントをしない。再調査の要請にも「検討するに当らない」と却下した。

●人間社会の闇、企業や政治、国家の意図、思惑による真実の歪曲と隠蔽。それはもっともっと沢山、目に見えない形で溢れるほど存在しているのだろうが・・・・。

●悔しさや、無念の数は無くなった520人だけではない、その家族、親戚、知人・・・そしてその他の多くの人たちの中に存在しつづける。

●8月3日に「慰霊の碑」で合わせた手を、12日にはもう一度合わせ、遺恨の晴れる日が来ること、無くなった人達の冥福を祈る。


動画:ボイスレコ一ダ追記:2011年春、FC2動画にこの番組の全編がアップされている。(ボイスレコ一ダ
TV局側はこの動画の削除は依頼せず、一人でも多くの人が、何年先でもこの番組を見る事が出来る状態がずっと続いて欲しいと思う。

関連日記:
2009-02-20『ボイスレコーダー〜残された声の記録〜ジャンボ機墜落20年目の真実』(再々見)

2007-07-25 TV『ボイスレコーダー〜残された声の記録〜ジャンボ機墜落20年目の真実』 真実の重さ映画の完全なる敗北

2008-07-05 『クライマーズ・ハイ』作品に対する真剣さが足りないのではないか?

2006-05-17 『クライマーズ・ハイ』(NHK)硬派、重厚、映画に勝るTV演出

2008-07-06 『クライマーズ・ハイ』(NHK)再見:圧倒的迫力とリアリティだ

2008-08-03 ー御巣鷹山への道ー2008年8月1日〜3日

2009-11-03 『沈まぬ太陽』力作ではある。が、拒絶したい部分あり。