『銀河鉄道の夜』(1985)

監督:杉井ギサブロー
原案:ますむらひろし

・多分、日本人の殆どの人が知っているであろう宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」、中学生の教科書に載っているというのがその大きな理由だろうけど、実際に原作童話を読んだことはなかった。

・なにか子供心に、わくわくする話だとか、ときめく楽しい話ではなくて、暗くて、重たくて、怖くて、悲しい話という印象があって、敢えてちゃんと読みたいという気持ちが引けていたのだと思う。

・ヘッセの「車輪の下」の悲しいイメージと重なっている。

・アニメ化し、登場人物の二人を猫にしたことは、子供にとってはとても取っつきやすい変更だろう。登場人物がジョバンニとカンパネルラというカタカナ名前で、どこの国の人ともわからず、どこか外国の話のように思えていて、ヨーロッパの雰囲気を感じるけど、どこの国というはっきりした絵もわいてこない、なにか日本ではない不思議な外国の、遠い昔の話のようにも思える。

・この作品はアニメとしても評価は高いし、宮沢賢治の童話を映像化したものとしても評価は高い・・・だが、その評価は大人がしたものではないだろうか? 「子供に見せたい名作映画」などとしているが、それは大人が大人になった感覚でそう思っているのであり、子供がこの映画を観てどう思うのか? 子供がこの映画を良い映画だなぁと思うのか。この映画を好きと言うのか? 果たしてどうだろう? 子供向けの内容とはとても思えない。大人向けの大人が子供に見せたいと思った映画であり、子供が見たいと思った映画ではないのではないか?

・カンパネルラが川に落ちて死んでしまうという話は、教科書を読んだだけなのに強烈に記憶の中に焼き付いている。

・古い作品だけど、古さは感じない。

・切符を拝見いたします・・・・の怖さ。ちゃんと切符を持っていても、車掌さんが来て「切符を拝見します」と言われると、子供の頃はいつも緊張して怖かった。悪いことなんかしていないのに、なにか問い詰められているような、もしかしたら間違った切符を僕は持っているんじゃないかというような・・・それより列車の中では車掌さんというのは絶対に逆らえない偉い大人という印象があった。その怖さをしっかり描いている。これは宮沢賢治が本当に子供の目線で物語りを作っている証だ。