『FLOWERS フラワーズ』(2010)

蒼井優はたしかに古風なのっぺりとした顔つきで大正、昭和の女性の顔的なのだが・・・白黒の画面にしていても日本の古さが全く漂っていない。着物、家、部屋、障子、襖、机、こまごまとした美術を使って古い時代の日本を演出し感じさせようとしているのだろうが、まったく古き日本が感じられない。そして役者そのものからも古き日本の雰囲気が漂っていない。

・唯一女優らしさ、女らしさ、女優の演技、表情や仕草、漂う雰囲気でを感じさせていたのは鈴木京香のみ。

・まるでセロファンに書いた絵がぴらぴらと薄っぺらく動いているような映画。立体感もなければ肉感も生命感も感情も心情もない薄っぺらな透明用紙にのっかったのっぺりとした絵のような女優たち、その演技、その演出、その感情表現、なにもかもが全く奥行き深さ厚みのない極めてぴらぴらとした風に飛びそうな超表面的で上っ面だけを舐めているような映画。

・脚本も酷いというか、あってないようなもの。これが脚本というか話しといえるのか? 一体なんなんだこれって?と言いたくなるような映画。いやこれは映画なんて呼べる代物ではあるまい。

・よくぞこんなものを撮ったものだ、作ったものだ。日本の邦画界の悪しき部分が結実したような作品ともいえるか?

・「タイヨウのうた」を撮った小泉監督は嫌いじゃないが、女性の、人間の情緒や感情まで表現できるほどの技と深みはまだ若くもあるし身に付けてはいまい。だからこんな映画になってしまった。あてがわれたホンと作品を雇われとして撮っただけで、この作品になんら心は、思いは、情はこもっていない。

・もうこれは、なにもかもが・・・・な映画。