『トイレット』(2010)

荻上直子の独特の世界、映像、お話は非常に好きというか、ほとんどなんの抵抗もなく皮膚から染み込んでくるようで好感が持てる。

・しかし、この作品は出だしの10分で「これはなんだか目茶苦茶つまらなそうだな」という予感が走る。

・『かもめ食堂』や『めがね』にあった画面に漂うどきどき感、わくわく感、なにか知れぬ爽やかでありタラ〜っとした空気感がこの映画から感じられない。

・もたっとしたジョークも今回は全然つまらないし、まったくニヤッっとすることもできなかった。

・何から何までなんだこれは・・・という印象しか残らない。

・これは極めてつまらない映画。くだらないというところではないけれど。

・和と洋のトイレの違いに着想して、なにかを語りたかったのかもしれないが、何も伝わらないなぁ、これ。

・流石に、本場のフィルムスクールで徹底的にしごかれ鍛えられただけあって画面の質は高い。外国のスタッフを使ったこともあるだろうだ、日本人の監督が撮ると、どうしても日本の空気だとか匂いに近いものが画面に宿ってしまうのだが、この映画は日本人っぽさがほとんどまるでない。

・しかし、カメラやフレーム、光の質がいかに高くても、やはり映画はそもそもが脚本、話。そこがしっかりしていなければやはりどうにもならない。『かもめ食堂』や『めがね』もあってないような話しだったけれど、これは話しを作ろうとしながら話しになっていない。

・『かもめ食堂』や『めがね』で現れていた荻上直子の特異な感覚と空気感が、この映画では却ってマイナスに作用して実に詰まらない映画にまとまってしまったというべき。

・あんな気がつかないようなチョイ役にサチ・パーカーが出ていたとは驚き。

『トイレット公式ページ』http://www.cinemacafe.net/official/toilet-movie/