『シン・レッド・ライン』(1999)

・これは最初に観た当時、物凄いショックを受けた映画だ。

・なぜかこの映画を観たあと、これは『2001年宇宙の旅』に似ているなと感じた。映画に流れている波動や思想が同じように感じた。

・映像に匂いがある、映像から匂いを感じる。夏の匂い、草が茂った丘を吹く風、そこに流れる草いきれ

・東南アジアの朝の光や匂いが感じられる。

・美しい映像、テレンス・マリックのマジック・アワーの奇跡。

・映像と共に流れる音楽が全ての映像を象徴的なものに換えている。

・表情に浮かぶ恐怖、不安、恐れ・・・言葉が無くても如実に観る側に伝わってくる。言葉で説明せずとも映像が全ての気持ち、感情、心を表現している。

・そして、目に浮かぶ狂気。

・戦争をエンタメ化した作品が多いが、これは静かに鋭く戦争を批難し、人間を哀しむ映画。

日本兵の姿がいびつではない。とても自然だ。他国によって、漫画や映画やその他映像で固着され、典型化された明らかにいびつな日本人の映像とは全く違う。日本兵を色眼鏡や偏見のない透明で真摯な目で見、描いている。

・「戦争は人を高めず、けだものに変える。魂を汚す」

・「絶対的な悪は人間にある」

・こんなに美しく悲しく、そして痛烈な戦争映画、戦争を批難し、人間を哀しむ映画はない。

キューブリック2001年宇宙の旅』、開高健『夏の闇』そういったものに通じるものがある。

・観るのは大変だ、『地獄の黙示録』と同じく心して観ないと行けない作品だ。だがこれもそのしんどさを超えて観たならば、何かが変わる、そういう映画だ。

・「映画というものはそれを観終えた後に、自分の中の何かが変わっているようなものだ、そういうものでなければならない」「映画を見終わったら、俺はこうしたい、こう変わりたい、初めて分かった。そういうものがあって、語れるものでなければならない。それがなければ、そうでなければ映画である意味がない」そう強く語った人がいたが、正にこの映画はそういう映画。

テレンス・マリック・・・最近ちょっと変な作品も撮っているけど、やはりこの人の撮る映画は重みがある。訴えるものがある、観終えて何かを変える力がある。この監督は特別な存在である。