『若草の萌えるころ』(1968)

ヨーロッパ映画、その中でもフランス映画と聞くとそれだけである程度以上質の高さと文芸的香りがただよった秀作と考えてしまうようなところがあるのだが、当然のことながらフランス映画だからすべからくイイ映画でも味のある映画でもあるわけがない。

・この映画は言ってみれば1960年代の日本で乱造された、中身を煮詰めていないただただ撮って上映する、小屋を埋めるために作られたような粗雑な映画、1970年から80年代に作られたアイドル映画、そんな雰囲気の映画だ。

・なにか目的とか目標とか訴えるものがあって作ったというより、客受けだけを狙って粗雑にやっつけしごとのようにして撮られた映画、そんなフランス映画という感じだ。

・話はもうなんだかなぁという感じ。

・大好きなおばあちゃんが危篤になって、いたたまれなくなって家を飛び出して初めて夜の街をさまよい、いろんな男と出会って、迷ったり悩んだり楽しんだりする・・・そういう状況はどこの国、人間でもほとんど共通してあるものだろうし、それだけなら映画にするほどのものではない。そこで何を思い何を感じたか、心にどんな襞が刻まれたかを女性を通して表現する。それをいかにして言葉で表現するかと葛藤し文学にするなら芸術的、ただその筋だけをカメラで追いかけ、映像が心の表現に辿り着いていなければありきたりの一夜の詰まらぬ出来事にしかならない。

・この映画は話を映像で繋いでいるだけで心情の表現、伝達といったところはほぼおざなり。この女性のこころの葛藤などなにも感じない。

・主演の女優、ジョアンナ・シムカスはいかにもヨーロッパ的な美しさはあるが、昔は金髪美人というかんじで日本の映画雑誌などでも人気があったのだろうか? 冒険者たちに出演していたこと、シドニー・ポワチェの奥さんということで、ちょっとびっくり。