●日本の一揆の中で唯一農民が勝利したのが郡上一揆・・・らしい。
●自分の懐を膨らませる為法律を変えて、税金を上げて、市民、農民から都合よく金を吸い上げようとするというのは今の日本でも、昔の日本でも全く変わらず同じだということ。昔の方が今よりももっともっと大変であっただろうけれど、役人はご都合よろしく、自分たちで法律を変えて税律を上げて税金を吸い上げることばかり考える。幕府もお殿様も、自民党も民主党もみな同じ・・・見終わったらそう思えた。
●農民が苦しみぬいてお殿様に直訴して、直訴した農民たちは打ち首、さらし首になるけれど不正を働いていた連中は左遷された・・・こういう話なのだが、どうもこの映画、農民の苦しみ、貧困な状況は描いているけれど、役所で拷問を受けて苦しんだり、死んでいく農民の姿を描いてはいるけれど、その農民たちが一致団結して一揆を起こし、押さえつけようとする役人たちを振り払い、ついには勝利するというそういう流れはあまり強く描かれていない。日本で唯一農民が勝った一揆ということだが、この映画を見終えると「これで農民が勝ったと言えるのだろうか?」と思えてしまうのだ。
●映画を観る前の最初の期待としては苦しめられ、痛めつけられた農民の怒りが爆発し、それが大きな一揆となって悪徳役人を吊るし上げ、農民の集団が遂には殿様にまで気持ちを変えさせ、大勝利を勝ち取る・・・というような話なのではないだろうか?と思っていたのだが、最後の最後まで苦しめられ、終いには打ち首にされ、その首は郡上に戻ってきて妻や娘や村の仲間の前でさらされる・・・これは勝利なのだろうか? これで農民が勝ったといえるのだろうか? 結局立ち上がった農民は殺され、悪徳役人は左遷されたとしても農民が勝利したとは言えないのではないか? そんな胸がすっとしない気持ちが残る話しだった。
●これでは「結局農民は苦しめられて死んだだけなのだ」という映画になっている気がする。何千人という農民が立ち上がり、一揆をおこしそのうねりのような暴動に幕府も殿様もおそれおののき、結局頭を下げる・・・とういう映画にしてほしかった。でも実際はこういう終わり方だったのだろうか? だとしたら結局農民は市民は苦しむだけじゃないか・・・そんなかなしい思いしか残らない。この映画では誰も救われないではないか・・・そんな風にしか思えないのだ。
●緒形直人の演技はなかな気合いが入っていて迫真である。