『マザー・テレサ』

●ファースト・シーンから、これは生き写しか? と思えるほどのオリビア・ハッセー演じるマザー・テレサに驚く。特殊メイクを施したとはいえ、これは本物なのでは? と目を疑ってしまうほどだった。

マザー・テレサ役にオリビア・ハッセーを起用したことは奇跡にも近いほどのベスト・キャスティングだっただろう。

●監督であるファブリッツィオ・コスタは殆ど無知であるが、出だしからなかなかの映像。カメラワーク、フレームワークでなかなかの監督ではないかと思わせる。

●まだ若き頃のマザー・テレサが自分の為べきこと居るべき場所を見定め、孤児を助ける施設を開設する辺りまではなかなか中身が濃い、だが、その後、幾多の陰謀、策略、妨害に巻込まれ、それを乗り越え、ノーベル平和賞を取りといった展開は余りに急ぎすぎている。後半は殆ど事実をなぞっていくことに終始してしまったかのようだ。

●一人の崇高な女性の生涯を描くのに二時間では明らかに足りないのであろう。こういう映画であれば3時間でも4時間でもいいからじっくりと描ききって欲しかったと思う。(観るのは辛いだろうが)

●インドにはガンジーがいた、そしてマザー・テレサも。多くの民族、宗教、貧困、飢え、対立というどうしょうも無いほどの渾沌と混乱の中に奇跡のような人が生まれるのだろうか。ガンジーマザー・テレサ。溜息が出てしまうほどに、その深遠と信仰、自由、平和の為の自己犠牲が余りに強すぎて、とても素直には観ていれない程。全てがわかっていても、自分にはとてもこんな生き方なんてできないと思ってしまうだけなのだ。

●インドに登場した二人の偉人。ガンジーマザー・テレサ、あまりにも気高い精神に、だらけた自分は到底足下にも寄れない精神、思想、世界観・・・こういう作品は遠い雲の上の話として距離を置いて観ないとホントは厳しい。

●映画はもっともっと歴史を取り扱うべきだ。