『20世紀少年 第1章 終わりの始まり』

●原作マンガのファンは余りイイ話しはしてないし、原作マンガをこれっぽっちも知らなかったが(見たことも聞いたこともなかった)映画の資料から粗筋を読んでみると、どうも突拍子も無い空想話しのようだし、果たしてどうなのかと思っていた。監督が堤幸彦でなかったら大して興味もわかなかったかも知れない。

●原作を読んだこともなく、ただ大まかな映画の粗筋を読んだ限りでは、ずいぶんと骨董無形な話しだと思ったし、それを実写映画化するってどうなんだろう?とも思った。マンガの世界のマンガ的なお話を実写にしても現実感が無いし、だったらアニメの方が合ってるんじゃないの?とも思った。

●しかしながら「20世紀少年」は、そのまんまマンガの世界を実写にしたことで、敢えて「現実的じゃない」とか「嘘っぽい」とか「ありえない」とか言う感覚を見事に吹き払ってしまった。実写映画であるが、これはマンガであり、ギャグであり、ホントに空想物語なのだなと、それでいいのだなと。

●キャスティングには相当に神経を使ったのだろうなぁ。原作マンガのキャラクターとの類似性という部分はもちろんであろうが、それ以上に驚いたのは映画の中に出てくる子供達と、その子供たちが大人になったときの顔のラインと雰囲気の相似性。最初に主要キャストとして大人のキャラクターを選んだのであろうが、その子供時代を演じる子役が、驚くほどに大人キャラの輪郭や雰囲気を持っている。多少はメイクや髪型で上手く似せている部分があるとはいえ、これだけ似通った線を持つ子役を選びだすのは相当な労力が要ったことである。これだけぴったしの子役を揃えたというだけでも凄いと言える。

●今回のこの第一話は、全三部作の導入というか、背景説明という感じが強い。ラストの爆発意外は、さほど凄いアクションシーンや特殊効果シーンがあるわけでもない。2時間の映画にしたら最初の30分位の起承転結の”起”位の部分である。それでいて2時間22分という長尺。一体どうなるのかね?この第1作は?と思っていたけれど、思ったより面白い。まだ3部作の説明の出だし部分だというのに、流石堤演出、面白い。2時間22分の間、充分に楽しくスクリーンを観ていられる。(まあ、ちょっとダレル部分が無いとは言えないが)

●これは堤監督の演出の妙だろう。テレビドラマで色々と面白い、特徴的な演出を披露し、内容云々よりも、観ていて面白いという番組を作り上げてきた”演出家(本人がそう言っている)でもある堤幸彦の本領発揮と言ったところだろう。話しは説明調で、大してストーリーとしてダイナミックな展開もないのだけれど、面白いのである。

●原作にはなんら思い入れも無い自分としては、この映画は非常に楽しめた。これっぽっちの中身とこれっぽっちの展開なのに、なんでこんなに面白く感じるのだろう、全く飽きさせることがない映画を作れるのだろう?と驚くばかりである。

●最終的には3部作全部を観ないと分らないであろうけれど、この面白さならストーリーが本格的に動き出す、第二部、第三部にも相当期待出来そうである。

●ラストで翻る旗をバックに、明るく、そして爽やかさのある笑顔を魅せる成長したカンナ。この物語の重要なポイントとなるカンナ役を見事に射止めた平愛梨だが、このラストの表情を見ると、これもまた見事なキャスティングをしたものだなと感心する。爽やかな笑顔の下に、これから地球を救うために仲間を引っ張っていく、意志が強くて、皆を統率するまるでジャンヌ・ダルクのごとき輝きが煌めいている。

●こういった役に嵌まるキャラクターを選ぶというのは、ホントに凄い事だ。どうも原作ファンの間では、このキャスティングがブツブツ言われているようだが。(カンナ役だけじゃないか)平愛梨の力のある目がイイね。本人もなかなか芽が出ず、女優業引退まで考えていたということだが、この作品を機に大きく羽ばたいて欲しいものだ。素の写真だとかを見ると、ちょっと違うンじゃない?と思ったりもするのだが、カンナ役としてブルーのジャケットを着て、帽子を被っている姿は見事に原作のイメージ。というか原作を知らない自分でもラストに出てきたこのカンナの姿には物凄いパワーを感じたし、とても爽やかな風のようなイメージだ。

●次回作の公開は来年1月。ウインドウは短いがたぶん年末にDVDも発売になるのだろう。劇場公開ーDVD発売ー劇場公開とプロモーションを連続させて話題を盛り上げていくやり方だが、今年の年末に掛けてどんな派手なプロモーションが行われるかも楽しみだ。


●第1作目は中身があるとかの作品ではないのだけれど、堤監督の手腕で、見事な面白さになっている。これから続く第二作、第三作に多いに期待したいところだ。