『ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌』

●第1作目が非常に面白く、なかなか良かったので第二作にはかなり期待していたんだけれど・・・・ダメだったなぁ。

●第1作の公開が2007年4月のGW期間。予想以上に観客の入りも良いし、評判も良かったからと急遽第二作の製作を決めたのだろう。しかし、この2008年夏休みに無理矢理合わせた公開とすべく、全て大急ぎの大急ぎ、突貫スケジュールで兎に角作って夏休みに間に合わせたというところが本当だろう。この映画の撮影は、内容からして2007年の秋から冬に掛けて行われたと思われる。となると、2007年5月に公開が終了して、6月位には第二作の製作を決定し、予算を決めて、キャスティングをして、脚本まで書いて、なんだかんだと準備をして、資料によると2007年の12月11日がクランクインで撮影開始ということである。つまり、第1作の公開から約半年で、全部のスケジュールをまとめて、映画撮影にはいったということになる。
まあ、半年もあればなんとかなるでしょう・・・という言い方もできるが、テキトーな内容のアイドルものならいざ知らず、水木しげるの名作の映画制作に準備期間が6ヶ月とは・・・ヒットの流れを逃すまいと、いかに大急ぎで製作していたかが明らかだ。

●せっかくのヒット作の余韻が消えぬうちに、次回作を作ってしまおう、そうすればそこそこの興収は固いと読んでのビジネス的な進行であろうが、よくまあこれだけの短期間にフィルムパートナーを集め、お金を工面して、これだけのキャストのスケジュールを調整してと・・・まあそこは凄いねぇと思う。だけどねぇ、そうやって大急ぎで作った作品だから、こんな内容になってしまったんでしょう。

●大体にして、妖怪、お化けと来たら”夏”なのである。7月公開の妖怪物映画だというのに、映画の季節は冬!!!! シーズナリティーも観客の季節感も全く無視。これもこの夏の公開に合わせて突貫で昨年冬に撮影したんだからしょうがないとしても、本来この映画はこの7月に公開するべき内容じゃない。外は30度を越す真夏日だというのに、映画の中ではマフラーにコート、そして雪。「だから涼しさ感じるんじゃない?」なんてご都合主義の考えはごみ箱行き。妖怪映画は夏に公開すべきだし、それ以上に映画の中も夏であるべきだ。そういう当たり前のことを無視して、無理にこの7月に公開してるってのは、もう金儲け主義がミエミエで嫌悪感を覚える。

●シーズナリティー無視の上に、急いで書いた脚本がボロスカ。沢山のキャラクターを出してはいるが、どれもこれも表面的。深堀してないキャラクターとエピソードが満載である。
・鬼太郎と母親の再会の話
・「かごめかごめ」の唄の真意
・「鬼道衆」の存在
・「ぬらりひょん」の悪意の背景
・「夜叉」がなんで日本にいるのかとか・・
・「護人囃子」と「五人囃子」の関係、違い

・・・・・・んー、つっこみどころ、ワケの分らぬところを取上げたら切りが無い。日本の神話や伝説をあちこち摘んでエピソードを作っているが、ホント、つまみ食いであって、深堀は全く無し。妖怪の話しということから、面白そうな伝説をどこかから拾い集めてきて脚本を作っているのだろうが、話しが成立していない。あれもこれも、なんだか分らんという感じだ。もう突貫工事のこの脚本がそもそもどうしょうもないということだろうね。

●ストーリー展開にはスピード感もドライブ感も全く無く、だらだら説明されている感じ。あちこちに飛び散ったエピソードはバラバラに浮いており、特に前半は「一体なにやってんだろうねぇ」的なつまらなさである。

●もうこれは途中でどうしょうもないなと諦めた。

●とにかく、話しがまったく纏まってない、筋が通っていない。だから最後までわけのわからぬストーリーにて映画が終わる。

●有名俳優をよくもこの短期間で集めたものだという気はするが、前作のようなウイットに富んだ俳優の使い方がされてるわけでもない。名前を並べれば豪華な出演陣なのだが、それを生かし切れていない。名前と顔(まあ、顔はメイクで分かりにくいが)を羅列して豪華さをだしただけか?

・フィルムパートナーに某怖い系の芸能事務所がでかでかと名前を出していたから、その力が強かったんだろう。

●こんな映画の中で”濡れ女”を演じた寺島しのぶだけは、ただ一人輝いていた。周り中がどうも適当な演技してるような中で「私は違う」とでも言いたげなほど、真剣な演技、そしてこんな映画の中でも際立って目立つ、本当の役者だ!と思わせる演技をしていた。周りの役者とは格の遥かに違う寺島しのぶの演技を見たことだけはこの映画の価値となるであろう。”濡れ女”だけで一本ホントに怖い怪談を作れてしまいそうな位凄い演技だった。

●第1作の実に面白く、センスのいいオフザケに自分もこれは拾い物だったと賞賛の文を書いたが、その良さがこの第二作にはまるで出ていないと言っていいだろう。

●せっかく人を呼べるシリーズ物の芽を掴んだのだから、次回作はもっとキチンと作って欲しいものだ。そうでないと、見るほうはシビアだし正直だから、映画にそっぽを向き、シリーズを直ぐに潰してしまいかねない。(実際今回の観客の入りは・・・・ちょっとアブナイ感じ。レンタルになってから見ればいいやって人が多いんじゃないかなって気がする)

●CGIはこれまた日本もここまで出来るようになったんだと思わせるほどのレベル。目玉オヤジなんかのナチュラルさは驚き。もう日本でもCGIで勝負出来るところまで来てるでしょう。

●全開なかなか良かった妖怪踊り、田中麗奈の両手をだらりと上げた妖怪ダンスは「ここまでオフザケしてくれたら楽しいよ!」と絶賛物だったが、今回はそれもなし(ほんのすこし踊りはあったが、あれじゃね)

●竹切り狸の妻である星野亜季と、文車妖妃の中川翔子は、流石に目立ってました。妖怪のメイクをしてても、誰だろうこれ?って思うくらいかわいい感じ・・・・星野亜季はメイクしてたほうがコケテッシュで可愛いんじゃないの・・・まあ年齢もあるから、メイクしたほうが若く見えるわけだ。

☆映画批評 by Lacroix