『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』

●19年ぶりの新作。こういうパターン(長いブランクの後の続編というパターンのこと)はあまり良いものが出ていないのだが・・・・・。
例)「ターミネーター3」・・・・ハリウッドの汚点ともいえるほどの最低作品
  「ランボー 最後の戦場」・・これもなぁ・・・嘆きの作品

●いや、天下の大冒険活劇、インディー・ジョーンズなら、ルーカスとスピルバーグなら、がっかりさせるような物は作らないだろう!そういう期待を持って映画を見たのだが・・・・んー、ちょっと自分の期待値が余りにも大きすぎたかな? なんだかちょっと物足りない、諸手を上げて拍手をしたかったけど、できなかったという感じである。

●いや、映画のクオリティーとしてはもう充分にハイレベル。これに文句を付けていたら他の洋画なんてどうなっちゃうの?って感じなのだけど、殊更インディー・ジョーンズに限っては、まったく予想外、ハラハラドキドキ、もうびっくり仰天、最後には「やったぁ!!!」と大拍手をしてスカッとした気持ちで、暗い映画館からタイヨウの降り注ぐ外に出て、青空を見上げて「んー、よかったなぁ、やっぱり映画って凄いなぁ」と、思えるものであって欲しかった。(ちと文章が青いな?)

●どうも展開がスローな感じ。グングン引き込まれ乗せられて行くようなスピード感、ドライブ感がもうちょっと足りないという感じ。(インディー・ジョーンズという映画レベルではということだけどね)

●沢山映画を見て、色んな演出を見て、そういうのに慣れてしまったせいもあるのだろう、求めるもののハードルが上がってしまったというのもあるのだろうけれど。

●第二作目の「魔宮の伝説」を観たときは、もうシーンごとに劇場がワー、ワーっと盛り上がり、観客が映画のストーリーと一緒になって、遊園地のアトラクションの中に自分もいるようなそんな凄さ、面白さがあった。あの、飛行機から投げ出されて、ゴムボートが広がり、雪山にドーンと不時着するシーンなんか、映画の途中だというのに観ている人皆が思わずワーっと叫んで拍手をしていたっけ。そしてエンドロールが始まってもずっとみんな拍手していた。試写会でもないんでもない一般の極普通の劇場でだよ。だれに強要されるワケでもなく、なんかそういうしきたりが出来ちゃった映画というわけでもなく、自然にみんなが感激して、嬉しすぎて涙流して、大拍手してた。時代というのもあったのだろうか? あの時のような感動を求めて今回もこの作品を観たのだが、んーやはりそこまではとてもいかなかった。

●でも初めてこのシリーズを観た小学生、中高生、いや、大学生でも、そこそこには楽しめてるだろうけどね。クオリティーは高いもんね。なんでもそうなのだ、美味しいものをイッパイ食べていると、昔美味しいと思ったものがなんでもない味に感じたり、美しいと思っていた景色が、なんだか普通に感じられるようになってしまったり・・・・それが人間の感覚というものなのだろうけど。

●とまあ、そういうことで、作品の中身について言うと・・・。

●ストーリーを地上での神秘的なことから飛躍しちゃって宇宙、SF的なものにもっていったのは、ちょっと残念。話しは飛躍しすぎだし「Xファイル」かよ?というかんじになってしまっている。新しい話しの持って行き方として脚本家やプロデューサーそして、ルーカスとスピルバーグがアイディアを出したのだろうけど、こういうのは”逃げ”って感じがするなぁ。

ケイト・ブランシェット演じるロシアの軍人はもう、ハリソン・フォードを食っちゃってるね。演技ウマ過ぎ。訛りのある英語もよくまあココまでというくらい上手いし。この人はホントに名女優と言っても誰も異議がないだろうね。役毎に完璧にその役の人格になりきってる感じで、ケイト・ブランシェット本人の持ってる色ってものを完璧にカモフラージュしてる。日本のアイドル上がりの女優なんか、どんな作品に出てても皆同じような演技、個性、色を出していて、どの役をやっても同じ人になっちゃってるのだけれど、ケイト・ブランシェットは演ずる役毎にまるで別人。物凄い演技のテクニックを身に付けているひとなのであろう。ケイト・ブランシェットを観るだけでも価値あり!

●最後の方になるとどうもスピルバーグの過去作品のエッセンスがあちこちに出てきて総集編みたいな感じになってしまってるなぁ。「未知との遭遇」「ET」「A.I」なんかでスピルバーグが見せてくれた映像、演出がこの作品でごっちゃになって再生されているような感じがある。んー、スピルバーグも歳か・・・まさか意図してこんなことしてるとも思えないし。

●第1作の「レイダース/失われたアーク」でコインを握りしめながら”I'm your partner"って叫んでいたあのマリオン(カレン・アレン)がまさかこんな感じになってるとは。ハリソン・フォードは第1作から27年も経ってても昔のイメージ残してるけど、マリオンは・・・う、大夫変わっちゃってるなぁ。あのほっそりしてキレイだった美人が・・・って、女性の方が30年近く経つと顔つきや体形は変化が大きいかな? 最初は分らなかった。それにしてもあの時インディーと出来ちゃって、その子供がって話しは、ありきたり過ぎない? 面白いけど、この手のストーリーは使われすぎてるよね。

ジョン・ハートが出てるのはイイねぇ。この俳優、好きなんだよねぇ。独特の骨張った顔つきで、名脇役。主役を引き立てる脇役だよね。エイリアンでチェストバスターに胸を食い破られちゃうシーンはショッキングでしたけど、その前に宇宙船の中で食事をするシーンが実に美味しそうでもあった。(笑)

●エンド・ロールを見ていたら、キャラクターデザインがGeoge Lucus / Philip Kaufmanとなっているのに気が付いた。おお、私の大好きなフィリップ・カウフマンがこんなところで仕事してるのかぁとちょっと驚き。また監督としてイイ作品撮ってもらいたいねぇ。

●ということで、ここ最近のアクション映画という中では、刺激がもうそれほど強くない出来になってしまっているけど、ノスタルジックな懐かしさの中で、2時間をまあまあ楽しめるというような映画でした。

★映画批評 by lacroix