『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』 

アメリカの大統領が民主党共和党かなんてことは、そういうことを勉強しているか仕事で関わっていないと、ちょっとネットで調べないと即座には分らないというのがホントのところ。これって多くの日本人にとって似たような感じではないだろうか?党派の違いはその位の関心なのだ。

●大統領選挙まっさなかのこの時期に、この映画は果たしてどっちの側の映画なんだろうと思ってしまう。この映画で触れられているアフガニスタン支援を行った親ブッシュや今の子ブッシュが所属する共和党なのか? それとも次期大統領と目されるオバマの所属する民主党なのか?

●素直に受け止めれば共和党のやったこと(アフガン支援)を擁護していると取れる? いや、深読みし裏を読んで、ひっくり返しで考えれば、これは「こんなことをしていたから911が起きてしまったのだ」とする共和党批判の民主党賞賛なのかも。知れない。ひねくれた見方をすれば、どっちにも取れる。

●だから、妙な知ったかぶりで深読みしてもしょうがない。思ったままに感じたままに言うならばこの映画は「俺達のやったこと、俺達の国、アメリカのやったことは間違ってなかったんだよ、そうでしょう」と、党派ではなくアメリカそのものの擁護、弁明のようでもある。何を今更にしてとも思うが。

トム・ハンクスにしてもジュリア・ロバーツにしても民主党派らしい。他の映画評でも民主党支持のトムがこういう映画を作るのが不思議だとか面白いとか書いているのがあるが・・・・どっちの党というのではないんじゃないだろうか? ちょっと前の「大いなる陰謀」ではメリル・ストリープが「今アメリカは世界で最も嫌われている国になっている」というようなセリフを喋っていた。この映画を見て感じたのは、大統領選挙の事でも、二大政党のことでもなく「そんなに嫌わないでくれ、俺達は悪い国、悪い国民じゃないんだ、世界で悪いことをしてきたんじゃないんだ、よかれと思ってあちこちの国で民衆の為に色々やってきたんだよ、だらかそんなふうにアメリカを悪者扱いしないでくれ」と泣き叫んで頼むから勘弁してくれよと叫んでいるアメリカとアメリカの国民の”逃げ”の言い分けである。

●映画の最後で「でも最後にちょっとしくじってしまったんだ」とアフガニスタン支援が911に結びついたことを自戒するようなことも言っているが、それこそ「皆がよってたかって俺達の国アメリカをお前達が911を自分で導いたんだって非難してるけど、俺達だってそんなことは毛頭考えていなかったんだよ、アフガニスタンの人たちを救おうとしたんだよ、それがこんなことになるなんて思ってもいなかったんだよ」と許しを求めている弁明のようだ。

●映画自体としては特に目立った凄さもなく、まあそつない出来上がり、つまらなくもないが、面白いわけでもない。こういう映画がここにきて次々でてくるということ自体がアメリカの抱えている病がどれだけ深いものか、もう誤魔化せないものになっているのだということの現れなのだろう?

ジュリア・ロバーツには何故かまるで魅力を感じない。骨がゴリゴリしているようで、女性っぽくも感じない。プリティーウーマンやエリン・ブロコビッチなどの演技で「私はジュリア・ロバーツが大好き、女性として憧れる、可愛い美女」なんて言っている女性の声が有るが、どうしてもこのいかにもアメリカ女性という顔立ちには女性的な魅力を感じ無い。まあこれだけ人気女優になっているんだから多くの人はその魅力を感じているのかもしれないが、自分は骨張ったジュリア・ロバーツが出てきただけで「うー、だめだなぁ」となってしまう・・・・好き好きではあるのだけれど。

●堕落した悪の大統領とそれを選んだ国民がごめんなさい、勘弁して、間違ってたよと言っているような映画である。

★映画批評 by lacroix