『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』(2008) 

●5月10日の公開週末も過ぎ、批判の声も充分世の中的に浸透しているであろうから、自分がなんと言っても構うまい。

●酷い!余りにも酷すぎる。芸能プロダクションに支配され、お抱えタレントの売り出しがメインの目的となった映画だ。最悪である。

●本当にここまで酷い出来とは思わなかった。これならオチャラケな分『少林少女』の方がまだ時間を無駄にした哀しさはない。

●樋口監督は嫌いではない。数々のSF映画で特技監督として頑張ってきた人だから応援したい。だが、この作品を見てしまうと、やはり特技監督をやっていたほうが評価が高かっただろうと思えてしまう。

●ジャニーズ絡みのジェイストームが出資しているところで脚本は圧力を受け、大きくわい曲されたのではないか? 何故に金山堀りの野人の役が主役級になってしまっているのか、松本潤が演じるから、そこに焦点をあてて、主役級の扱いをしろというプレッシャーが出たのであろう。流石に松本潤では本来の主役であった真壁六郎太は演じきれない。だから、本来は脇役、引き立て役であった金山堀りの野人(今回は武蔵となっているが)を無理やりストーリーのなかで目立つようにしたのだろう。秋月の姫との恋愛など有りえないとしかいいようがない。もうこの時点で脚本は激しいまでに破綻している。というか芸能事務所にへこへこした、愚劣な脚本に堕落したと言えよう。作品である映画作りでもなんでもない、

●名セリフ「裏切り御免」もなんたる使い方か。哀しくなる。それを越えて怒りまで出てきてしまう。最低である。

●今の邦画がバブルだなんだといっているが、この作品はその邦画を取り巻く金の亡者、スクルージドどもの薄汚い金儲けの魂胆が凝縮された単なる商品だ。映画でありながら、映画ではない。映画として作られていない、志向の低い、なんら映画を高めない。拝金主義マテリアル作品の最高のお手本、サンプルである。今後この映画は未来永劫に渡って燦然と輝く、負の記念碑なるであろう。

●これはもう、よい作品を作ろうなどとして出来た映画ではない。映画を作ろうとして出来た映画でもない。アイドルを利用し、金儲けだけを企み、過去の名作の名声に乗っかり、オリジナルを改悪し、ボロボロ、目茶苦茶にした作品である。「隠し砦の三悪人」を語ることは黒澤明に対する冒涜に値する。

●言いたいことは山ほどあるが、もうこの作品に関しても語る価値さえなし。脚本、プロデューサー、監督、出資企業・・・全てが邦画にとっての最悪のパートナーとなった劣悪な作品。

●2000年台、邦画バブルと言われる時代に金を吸い上げる事だけを目的に邦画の皮膚にたかり噛みついた寄生虫のごとき企業、人物が生みだした邦画の負の証明作品として、自分の記憶に留める。

●終盤戦となったアメリカ大統領選挙オバマ候補とクリントン候補がお互いに「 Shame on you 恥を知れ!」と罵りあっているが、自分もこの映画をこんな風にした連中に「 Shame on you 恥を知れ!」とでも言いたい気分だ。

●溜息の果てに、良い映画を見たくなった・・・・・「七人の侍」でも見て心の憤りを宥めるか。合掌

★映画批評 by lacroix