『日本のいちばん長い日』

橋本忍脚本・・・・黒澤明と組んでいたころ以上に、独立プロを作ってから橋本忍はいわゆる社会派的な様相を濃くしていった。

東宝創立35周年記念作品・・・これだけの社会的な重要であり、問題もあるテーマを35周年の冠を付けて製作したことは凄い。

●息を飲み、真実と思えるほどの緊迫した演技。若かりし頃の黒澤年雄の狂気とも思える演技には目を見張る。登場している軍人の表情、汗、目の開き具合、反乱を起こそうとしている人間の緊迫と狂気がフィルムに見事に焼き付けられている。

●このような歴史物、そして軍隊、天皇に絡む映画は社会情勢や製作会社、さまざまな企業の姿勢に振り回されなかなか思いきって作ることは難しい。今よりも昔は更にそういう傾向が強かったであろう。だが、それを押し、これだけの歴史的な大作として仕上げた橋本忍岡本喜八はもっと映画とともに称賛されるべきであろう。

終戦当時の社会情勢と、世の中では知られることなく裏で進んでいた事件をよくぞここまで如実に表現したものだ。

●役者陣の真剣極まる演技も見物。真剣でなければこの内容の映画には取り組めなかったであろう。

●最初は歴史ドキュメンタリーかと思われるような進み方だが、玉音放送にからむクーデター未遂の部分は見事な脚本と演出で緊迫したドラマとして仕上がっている。

●過去の名作としてあまり取り上げられることも少ない。それはやはりこの非常にセンシティブで危険な、それでいて真実をあぶり出した内容のせいでもあろう。

終戦決定にまつわるあの歴史的な日に、こんなにも危険で大きな事件があったということを、もっと多くが知るべきなのであろう。DVDとして発売されたことはその意味では少しは役に立つだろうが・・・・これを観る人は少ないであろうな。

かなり古い作品なので、若かりしころの役者の顔が今の記憶と繋がらない苦しさがある。
畑中少佐 黒澤年雄
椎崎中佐 中村忠
井田 高橋悦史......等々
メインの名優以外は書き留めておかねばわからなくなりそうだ。

●日本映画黎明期、橋本忍の渾身の一作