『ALWAYS 続・三丁目の夕日』

●回顧的な部分で観客を引き、それのみで映画としてのヒットをまんまと達成する・・・・そんな映画にはあっそ!とそっぽを向く気持ちがあり、どうもこの続編も昭和30年代の懐かしさばかりが取上げられていて、そんな映画なら敢えて劇場に足を運ぶ必要もない。そう思っていた。実際に第1作目はスタートからずっとそういった昔懐かしさばかりを強調する絵と話しであり、そんなこといつまでやってるの?早くストーリーを見せろよと言いたくなった。(淳之介が出てくる辺りからイイ感じになっていって、最終的にはまあなかなかの映画と思えたけれど)

●第1作のヒットからほぼ一年半。ものすごいスピードで第2作が出来たものだ。最初から企画されていたとは思うが、それにしても早いね。第1作も内容云々よりも昭和の頃の懐かしさや映像での再現ばかりがメディアでは取上げられていたと思う。そして第2作の製作決定が報じられ、それもなんだかんだと昔のあの頃のってことばかりがこの映画のエッセンスとして取上げられていた。あの頃を知っている人にはフックとなるだろうが、あの頃を知らない人には別にそれは重要なことではない。ましてや映画としてこの作品を観ようとしている人には、あの頃の再現は全体の中の一つのエッセンスでありそれがメインではない。あるはずがない。

●そういった感じで、この映画も観る前に相当自分自身にマイナスのバイアスが掛かっていた。回顧主義的なものばかり表に出てるような映画だったら観ても仕方ない、あとからソフトで観ればいいや。そんな気持ちになっていた。

●ところが、実際に映画を観てみると・・・・・これは非常に面白い。脚本と演出が実にこなれていて破綻が全く見当たらない。なによりも第1作で押しつけがましいくらいに見せつけてきた昭和のさまざまな風景、物が今回の第2作では非常に自然に画面に溶け込んでいる。白組のCGIのレベルというのはもうここまで高くなったのか。日本のCGIの技術はここまで絵を自然に見せることが出来るようになったのかと唖然とするほどである。ルーカスフィルム、デジタルドメイン、ヴェータなどの世界トップのデジタル画像技術を持ったところにはまだかなわないだろうが(追いつこうとしても更に上へといってしまう)この映画を観て、充分にCGIで映画の世界を現実世界と交差させられるレベルに来ていると初めて思った。(ちなみに、ちょうど年末にローレライをTVでやっていたが、やはりほんの2年前とは言え、この映画でのCGIのレベルはまだまだ低い。)

●いやはや、ほんとにこの映画のCGIはどれがセットでどこからが作られた絵なのか、その境目すら分からないくらいだ。その意識がなくなってしまえば、今度は純粋に話しの中に入っていける。

●正直言って映画を観終えたとき、これはほぼ満点に近い映画だなと思った。こんなことは滅多にない。最初に感じていたこの映画に対するネガティブなイメージはものの見事に霧となって消えてしまった。

●これだけ上手にまとまっているのだから作品の中身を云々ということはほぼない。小雪の演技は上手というのではないが、実にいい雰囲気を出していた。堀北真希は第1作ではほっぺたも赤く膨らませ、物の見事に田舎の女の子を演じていたのだが。今回は田舎っぽさを演出しているものの、第一線の超人気女優の華やかさと奇麗さが演出では隠しきれなくなっていた。やはりそれが女優というものだろう。(実は第1作を観たときこの子がまだ売れ出した最初の頃とはいえ、掘北真希だとは気が付かなかった。その位衣装、化粧、髪型とすべて田舎っぽい女の子の役作りができていて、今の超売れっ子の堀北のイメージとはまるで繋がらなかった)

●ラストの音楽もイイ。作品ときっちりマッチしている。まるで意味のない、作品とかけ離れたようなテーマ曲をくっつけている最近の邦画製作陣のやりかたはアホですかといいたくなるが、この作品はそういったミスもない。

●イイ映画だったね。2時間半近い長さも気にならず、上映が終わった後、観てよかったなと思える作品だった。また、頑張ればなんとかなるんだよ人間は・・という部分も、映画を観て元気づけられる良さをこの作品は持っていた。

●さてと、辛口批評だから、少しはネガティブなことも書くか・・・と思うが、殆どそういう所が見当たらない。ちょっと思ったのはストリッパーに落ちぶれたヒロミが抱えていた借金ってどうなったんだろうということ。後妻になることを決めた神戸の旦那が払ってくれたのかな? それなのに途中で逃げ出したのかな? まあいいや、それは・・・・。

●久し振りに元気づけれた映画であり、心がスッとする映画であった。実に優等生の映画である。実に優等生の作りである。ほぼ完ぺきに文句のつけ所がない作品である。

●だが・・・ちょっと時間をおいて考えてみると、余りにも上手に出来過ぎて、突出したものも、角も、刺も何もないというものでもある。世に知られる名作は多少のミスや誤魔化しがあっても、強烈に何かを突きつけてくるような個性があるものだ。それを考えると、この作品は、あくまでちょっと時間をおいてから思ったことだが、そう言った重さや、強烈な強さというものは・・・ない。とっても良くできた優等生! この映画を否定する気持ちはない。だけど名作か?と言われれば違うのだろうな。非常に良く出来た秀作というか、映画のお手本のような作品ということだろう。

●まあ、それでも、見終わったその瞬間には爽やかさとほのかな感動を心に届けてくれたし、観てよかったなと素直に思えた映画なのだから、きっとそれで充分なのだろう。・・・・・・・そんなもの何もない映画がゴマンとあるのだからね。