[洋画]『ブレード・ランナー』映画批評 by Lacroix

●この映画を名画座で観て衝撃を受けたのはもう20年以上前のことになるか。VHS,LD、DVDと何度となくいろいろなバージョンが発売されてきたが、ディレクターズカットなんていう呼び方が一般的に流布し始めたのはこのブレードランナーのソフトからかもしれない。
様々なバージョンで発売して一つの作品で何度も売上げを稼ごうというハリウッドの商売戦略に映画オタクはまんまとはめられているわけであるが、まあ自分もその一人ということか。ターミネーターなどはブレードランナー以上にあれやこれやと別バージョンが出ていて、それは追いかける気すらないのだけれどね。自分としてもこう言ったバージョン違いを欲しくなるというのはめったにないのだが、今回は別の理由もあり購入した。あまり過度にこういった商売が繰り返されるのもなんだかなという感じであるのだけれど。

●実は今回このDVDを購入しようと思った最大の理由は、劇場公開版が収録されているということだった。この映画を見たのは今は無き早稲田松竹という名画座で、なんと「ジョニーは戦場へ行った」との二本立てだった。(この組み合わせは一体なんなのだ?と今にして思うが)
その時は観たブレードランナーのラストシーンは緑広がる草原をレイチェルとデッカードがスピーダーのようなマシーンに乗って、レイチェルはいつまで生きるか分からないのだ・・・という希望を持たせる終わり方であった。そして広がる草原にバンゲリスの音楽が流れエンドクレジットに繋がるというものだった。

●現在では様々な解説本や個人のHPなどもあり、このエンディングはスタジオサイドが試写を観て、ラストはハッピーエンドにしろということになり、他の映画の映像を無理やりくっつけたということが説明されてはいる。だが、自分としては最初に観たこのエンディングが凄く気に入っていて、バンゲリスの音楽に合わせて緑の草原の上を飛んでいくラスト、が一番だと思っていた。もう一度あの劇場で観たラストシーンを観てみたい。そう思ったのが今回のDVDを購入しようと思った動機である。

●注文から二ヶ月。アメリカよりようやく届いたDVDボックス。躊躇することなく、最初にインターナショナル・シアトリカルバージョンを観る。


ブレードランナー 製作25周年記念 DVD-BOX』
税込定価 24,800 円  販売価格(税込)  18,352 円(26%OFF)


ブレードランナー』製作25周年記念 アルティメット・コレクターズ・エディション(5枚組み)
税込定価¥ 14,800   販売価格(税込) 10,951 円 (26% OFF)


ブレードランナー 製作25周年記念 DVD-BOX』 アメリカ本国より取寄せ
本体価格  $54.99
国際便送料 $ 7.98

                                  • -

合計    $62.97...........2007/12/22 7241円($1=約115円)

要らない人はいらないだろうが、5枚組みDVDにアタッシュケース、ブックレット、フィギュアなどの封入特典が入ったDVD-BOXがアメリカ本国では6300円程、日本までの送料込みでも約7241円。これと同じものが日本では定価で24800円。アマゾンや楽天での26%オフでも18352円。詰まり1万円以上の内外価格差があるという驚きの状態である。
アメリカのDVD-BOXの価格は日本の5枚組みDVDセット(特典無し)の半額でしかない。
この価格差の異常は一体何??

●ようやくという感じで10数年ぶりに劇場公開版のブレードランナーを見たが、改めて見ると劇場公開版のラストは違和感があった。映画館で見たときは輝くような草原に向かってデッカードとレイチェルは飛んでいき、その緑とそれまでの陰鬱な世界との対比でこころがスッとするようなものを感じたのだが・・・映画とは見ているときの状況でも変わるものである。あの頃は何の違和感も覚えず、このラストに拍手していたのだが・・・。

●ラストに希望がない、もっとハッピーエンドにということでスタジオ側がキューブリックの「シャイニング」の空撮部分別テイクを、ラストにくっつけたということだが、今では考えられないようなことを当時はしていたのだなと思う。一人の監督の作品に別の、しかもキューブリックの映画の映像をくっつけるとは・・・・その頃のハリウッドはそういうことが平然と行われる状態でもあったということか。

●ディレクターズ・カット版のエレベーターのドアがガタンと閉まって映画はオシマイというのもちょっと頂けないのであるが、劇場公開版のラストの違和感、それまでとはまるで違う感じの映像が急にバンと入ってくることを思えば、やはりディレクターズ・カット版がまっとうなのであろう。

●カルトな映画として名高いブレードランナーだが、2007年の年末に改めて劇場版とディレクターズカット版を見較べることが出来たのは非常に有意義だった。

●映画の中身のことを殆ど書いていないが・・・やはりめちゃくちゃ巧いよね。この映画のカットを見ると、劇画、漫画のコマのように思えるが、漫画チックというのではなく、ビルの陰からヌッと顔を出す、ルトガー・ハウアーの絵なども、実に考えて計算されているなと思う。

●兎に角、全編に渡ってスキが無く、画面の密度が非常に高く、計算し、感が尽くした絵の配置、役者の動き、入り方などが圧巻である。

●まあ、書いても書いてもこの映画はきりがないし、沢山の人が中身を分析しているから、作品の細かいことは他者の言に任せるとしよう。

●それにしても・・・・傑作であるなぁ。