『日本以外全部沈没』 

●時間の無駄。日本映画が凋落した、その原因となった日本映画の流れを見事に受け継ぐ史上最悪の愚作。

●話題作「日本沈没」の公開に便乗して筒井康隆の「日本以外全部沈没」を映画かして公開するというのは、便乗商法としては非常に巧いやりかたであり、自らが宣伝しなくてもなにかと話題にくっついて認知があがるというコバンザメPRの効果は高い。

●しかし、そういった宣伝手法も、映画そのものに内容がまるでないのでは観客を騙す手段でしかない。

●すでに公式HPはなくなっているが、確かどこかの記事に製作は10日で行われたとか書いてあった。(実際はもっと短いのではないか?)

●映画は下らないとしかいいようのないパロディー、笑うに笑えないようなギャグ。見ていてもう嫌になるようなレベルの脚本と演出である。

●撮影もまるで家庭用ビデオカメラで構図も動きも考えずただ役者をべたで撮っているだけというかんじで、画面に緊張感もじっくり考えて撮影している感じもまるでない。それこそ学園祭の演技を家族がハンディーカムで撮影してるかのようなものだ。

●「アメリ」のヒット仕掛け人??? そればっかりが話題としてとりあげられるトルネードフィルムの叶井俊太郎が、まるで低俗バラエティーテレビのノリで作った『いかレスラー』『コアラ課長』。そして同じ流れで作った低予算オバカ映画が「日本以外全部沈没」である。・・・・いや、もうこんなものは映画として呼ぶのもうっとおしい。

●そして、同じく低俗映画で組んできた河崎実監督とやっちゃえ的に作ったバラエティーと捉えておくしかない。

●こう言った路線で低俗な話題を作り、なんとかコバンザメPRでお金もうけをしようとしても映画には何も影響は及ぼさない。栄光も称賛もされない。

●公開できるだけ幸せなのであるが、本当はこんな映画を作っているよりも人に感動を与える映画を一本でも作ればいいものを、と思ってしまう。

●昔の日本映画ってこんな感じのが多かった。脚本も煮詰めず、撮影も適当。短時間で低予算で低レベル映画をさんざんに量産し、邦画の隆盛にのっかってどんどん低レベル映画を公開、放出していった・・・・・そして日本映画は観客から「酷すぎる、見る気がしない、洋画しかみない。邦画は金を払う価値がない」などと揶揄され甚だしい凋落をしていったのだ。

●『日本以外全部沈没』にはこういった昔のどうしょうもない邦画のテイストが沢山詰め込まれている・・・・というかしみ込んで滲み出ているという感じだ。もし仮にこんな映画が大量に生産されるようなことがあればせっかく盛り上がってきた邦画の流れを再び落し込めることになるだろう。

●が、実際にはそういうことはあるまい。こんな映画が多くの人に見られることもないし、少しは成熟してきている観客がこんな映画をイイというはずもなく、口コミも広がるはずもない。

●酷い映画であるが、その酷さは伝播すまい。酷すぎるからだ。

●この映画を見る価値は・・・こんな映画を作っていたから日本映画は一時期ダメになったんだよ。こういう映画を作っていたらなにも前には進まないし、感動も感激もなく観客をインスパイアすることもないのだよ。ナイナイやたけし軍団がテレビのバラエティー番組でやっている低俗なギャグと同じでその時は笑ったとしても記憶にも残らず消えていくものなのだよと、そういうことを学ぶための、ダメ映画の教科書としてはサンプルになるだろうということであろう。