『アルゼンチンババア』 

●酷すぎる映画である。これだけ酷い映画もない・・・・いや、割と多いか?
●奇抜なタイトルにまずは驚かされ、興味を喚起されるという訳ではあるが、内容を知ってしまえばただ奇抜なだけであり、これではアルゼンチンという国にたいする侮蔑のタイトルにも思えてしまう。原作者である吉本ばなながそんなことを考えていたとは思えないが、この映画の中身のなさからすれば「一体何がアルゼンチンババアなの? なんでアルゼンチンという国を表す言葉にババアという侮蔑の言葉を結びつけたの?」という疑問が悪いほうに結論付けられてしまう。

●映画の冒頭、屋敷の屋上でタンゴ(らしきものだろう、音楽がタンゴなんだから)を踊る鈴木京香演じるアルゼンチンババアが映し出されるが、オイオイ、これがタンゴなのかよ? どこにタンゴの情熱や激しさが表現されているの?まるで小学生がマイムマイムの練習でもしているかのようなたるい踊りで、右へ左へとステップを切り手を差し出して踊りを踊っているようであるが、これがタンゴでも踊りでもないだろう。監督はタンゴを見たことがあるのだろうか? こんな思いの入っていないただ揺れているだけのような踊りを冒頭に見せられたのでは「ああ、この映画もうだめだな」と開始5分で思ってしまう。

●細かいところとつつけばマテ茶の飲み方も全然間違っている。

●全体のストーリーなど話にもならないレベルである。「母の死を乗り越えてよみがえる父と娘のストーリー」などと宣伝されているが、わけのわからない、話の進行にまるで説得力のない脚本に見ていて苛立ちすら覚える。

●結局は
1)吉本ばななという人気作家の原作
2)鈴木京香役所広司という今の邦画のトップキャスティング
3)大人気で今が旬の堀北真希
これだけの材料がそろえば観客動員は確実でしょ!だから皆さんお金だしてくださいね。リクープは確実できっと利益還元できますから! などという筋書きで映画が作られたのだろう。

そして、監督には程よく作品をまとめてくれればいいやということであまり人気のある人物など使わず、お金のかからない監督を配するというお決まりのパターン。長尾直樹というキャリアのある監督には悪いが、しばらく演出の仕事を中心にしていて映画監督をするのも久しぶりのことだ。残念ながらヒット作を持っている監督でもない。いかにも製作側やプロデューサーが「原作と役者で華は用意してあるのだから、監督はそつなく妙なことをせず、うまく作品を丸めてまとめてくれればいい」という考えで起用してると思ってしまう。

なんにしてもストーリーに整合性も、驚きも、感動も・・・何もない。あるのは意味不明さ訳のわからなさだけである。

●これほど酷い映画もそうめったにあるものではない。だが堀北人気でそこそこ人は入るだろう。だが、ヒットは市内だろう。実際TVcmまで行っていたようだが興業はボロボロの状態である。まあ当然といえば当然だ。

●日本にラジー賞があるならこの映画が最有力候補だろう。