『蒼き狼 地果て海尽きるまで』

●悪い意味で全く期待しないで見た映画。

●リメイク版の戦国自衛隊も酷かった。男たちの大和は大ヒットしたが、これは高年齢者に受けたというのが実情。中身かなりスカスカで、映像的な頑張りはあったが、話しは古めかしく、ストーリーとしての奥行きが絶対的に足りなかった。

●金が有り余っているのだろう。これだけの大規模なロケ、機材、エキストラの多さ、なにもかにもがめちゃくちゃお金の掛かる内容だ。TV宣伝もバンバン流している。まあそれに釣られて見に行ったという人も多かろう。評価が出る前に散々宣伝して人を入れてしまえばいいのだ、そうすれば有る程度の興行収入は見込めるのだ・・・・自ずとそう言ってやっているかのような感じだ。

●最初の10分で「ああ、ダメだな、もう」と思わせるようなベタベタな展開。20分の段階ではもう出ようかと思うほどの酷い展開。セリフも歯が浮くようなものばかり。もうやっぱりなぁ・・・と見たことを少し後悔。

●韓国のプロダクションから抜擢したというAraはもちろん美形だが、この映画に出演させた意味は全くなし。ただの話題作り以外のなにものでもなし。

●監督がけっこう古い人だろうなというのは見ていて感じた。兎に角、撮影の流れ、絵のフレーム、カット割、編集とすべてにおいて古くさい。まるで現代的な映画技法が出てこない。昔の技法が悪いというのではない。この映画はあまり考えもせずシーンをそのままカメラで写して映画にしたというようなものだ。役者の演出も下手、というか演出に力を掛けているのかがこれでは疑問。せっかくのモンゴルでの撮影なのに絵の切り方が悪すぎてスケール感がまるで出てこない。

●脚本も最悪。トピックスが全部ぶつ切り。盛り上げようと頑張って書いたのだろうなというシーンもまるで盛り上がらない(これは監督の演出の悪さと、脚本の流れの悪さの相乗効果だ)

●最後までぶつ切りのトピックスと下手な演出、演技、ベタベタなセリフ、盛り上がらないストーリー、感度も爽やかさも生まれないただの平々凡々な演劇を見ているかのような内容。エキストラのちょんぼやミスで画面を台無しにしてるところが数ヶ所目に付く。(普通あれだけの大人数の戦いなんかだったらそういう小さいエキストラや役者のミスなど気が付かないのだが、やたら画面の真ん中でバカみたいな動きをしてるのが数ヶ所あって、目に付いた・・・・というかああゆう所はカットして編集すべきであろう。)

●まあここまで書いても書ききれないダメさがこの映画には満載。

●2006年は20年ぶりかで邦画の興行収入が洋画を越えたという邦画バブル的な良い話しも聞こえていた。確かに自分も最近はクドさてんこ盛りのハリウッド映画を見るより邦画のほうが良いと思って、邦画偏重の傾向がある。世の中的にも「今は邦画がなかなか良い感じ」という雰囲気が広まっている。しかしだ、そういう話しの一方で、せっかく久し振りに邦画を見に行った人が、こんな酷い映画を見てしまったら「ああ、やっぱり邦画ってダメだ」と思い、邦画を見ることから足を遠ざけてしまうようなことになってしまうのではないだろうか。

●全てにおいて古い。この映画は言って見れば日本の映画界が凋落しはじめたころのあの大手製作会社が適当に役者と監督だけ誂えてドカドカ駄作を連発していた、そんな時代の映画という感じである。