『蝉しぐれ』 

●美しく、切なく、日本の心に響き渡るような映画だ。これぞ邦画と言える作品であろう。長く邦画の歴史に残る作品として多くの人に観てもらいたい。

●最近割と時代劇も良く作られ、興行的にもなんとかなっているという状況であるが、 藤沢周平作というのがなんだか邦画時代劇の定番となっているかのようだ。「たそがれ清兵衛」は実に良い作品であった。「隠し剣鬼の爪」「武士の一分」は自分としてはかなりダメ。「花よりもなほ」は非常に特殊な作りの作品だが、監督の技量が存分に出ていてレベルの高い作品であった。そしてこの「蝉しぐれ」は絵の美しさ、ストーリー、脚本のガッシリとした腰の強さ、練り込まれた演技、そう言ったものが高度に昇華して日本映画、そして時代劇としては出色の作品となっている。

●成長した木村佳乃の美しさと哀しさを表す演技力は誰も文句をつけまい。

●成長した市川染五郎にしても、ベストな配役と演技の素晴らしさだ。

●その他の役者もすべて作品に質とリアル感を与えている。

●おしむらくは文四郎の幼なじみの二人に、今田耕司ふかわりょうを使ったことが悔やまれる。一流の役者陣の中でこの二人の演技は明らかに劣る。存在自体にも重みが無い。なんで重要な役にこの二人を使ったのか? 事務所からのプレッシャーがあったのか? この二人を使ったことが監督の最大の失敗であり、この作品の最大で唯一つの染みである。

●それにしてもラストの木村佳乃は美しかった。そしてジンとくる哀しさを表現していた。演技とは思えないくらいだ。

●ハリウッドのドンドンバンバンの映画にうんざりしてきたら、もう一度これを見たいと思う。

木村佳乃は時代劇づいているなぁ。さくらんでの汚れ役までした濡れ場の演技は大したものだったけど、あの顔立ちって時代劇に合うのかもしれない。