『スターウォーズ/最期のジェダイ』

☆☆ネタバレあり☆☆


・待ちに待ったスターウォーズ EP8の公開! 事前の情報、予告編などから想像していたことはすべていい意味でひっくり返され、期待にそぐわぬ素晴らしい作品に2時間33分スターウォーズの世界にどっぷり浸かって、物語を堪能! 目の前のスクリーンのなかで片時の別世界を味わえた。文句なしの満点だ、100点満点、映画映像としても極めてハイレベルなところに達している。人が絵をどうみたら、どういう角度でどういう配置で並べたら最も効果的に臨場感や恐怖感を味わえるかという点も極限まで計算されていると言えるだろう。そのくらい映画としてのできが良い。・・・だが、観終えて時間が経つに連れて・・・気持ちが少しずつ変化してくる。確かに素晴らしい映像、脚本の作品だ、だがそれ以上のなにか、満点を超える何かが無いかもしれないと。

・脚本は練に練られている。物語の整合性に疑問がでないように、きっちりとした話の理由付けが明確になされていて「あれ?」とか「ここおかしいんじゃない?」と観ていて思うようなところはほぼなかった。」(後から何点か思いつくところが出てきたが) ストーリーの流れもほとんどひっかりがなくスムーズだ。上映中も上映が終わっても「うーん、これは隅々まで感覚が行き届いた実にクオリティーの高い映画だ」「拾にスキがない、なんて密度が高く、がっしりと四ツに構えた映像の集合体なんだろう」とほぼ陶酔状態だったのだが・・・しばらくすると、だんだんと魔術が解けてくるように何かが足りない気持ちが沸き上がってきた。

とりあえず一回観ただけなので記憶が不確かだったり、間違えてとらえてしまっているところもあるかもしれないが、気になるところを、気に入った所を羅列しておくとしよう。

☆《ヨーダの造形に泣けた!》
前作『フォースの覚醒』では監督のエイブラハムがSW過去作へのオマージュ、回顧に走りすぎているという批判があったが、長らくのスターウォーズ・ファンとしてはそれはそれでワクワクドキドキしてとても良かった。ハン・ソロとチューバッカがミレニアム・ファルコンに戻ってくるシーンは感涙ものだったし。崩れ落ちたスターデストロイヤーや、AT-ATスノーウォーカーが画面に出てくるたびに歓喜した。
《 2015-12-22日記 『スターウォーズ/フォースの覚醒』SWファンにとって最高の傑作 》
今作では前作で批判も受けた懐古主義的な部分は少なくなっているという話を聞いていたが・・・なんのなんの、所々にファンなら喜ぶ旧作SWのセリフや映像がさりげなく散りばめられていて、なかなか憎い作りであった。そんな中で1番良かったのはヨーダの登場シーン。CGIの技術は格段に進歩していて、もはやどんな映像でも作れないものはないという状態であるのに、今回のヨーダ−はなんとその最先端のCGIで「エピソード4帝国の逆襲」に出てきたマペットヨーダ−を復活させているとは・・・監督たちのこのこだわり、この意識には敬服するね。作品の時系列を合わせる意味でもヨーダはEP4-6よりもさらに年齢を重ねているのは分かるのだが、あの1970年当時のマペットの風貌、動きをそのままに再現させているとは・・・お見逸れしました。EP5そのままに、杖をつきながらよちよち歩きをするヨーダ。新三部作のEP1-3でありったけCGIを使ってあのピョンピョン素早く目にも止まらに速さでライトセーバーを振り回すヨーダには驚いたが、ちょっとやり過ぎという感もあった。それが今回はなんとでも動きを作れるはずのヨーダをわざわざマペットのぎこちない動きに合わせて作っている。ここにはスターウォーズへの愛を感じるなぁ。そしてヨーダがルークと並んで遠い空を見上げるシーン。見事にEP5の若きスカイウォーカーとヨーダの並んだシーンへのオマージュ。こういうところにSWファンとしては嬉しくて涙が出てしまう。

☆《完璧なまでに美しい配置》
バージョンアップしたAT-M6ウォーカーのなんともカッコよく強そうで恐怖感のあることあること。AT-ATスノーウォーカーのデザイン上の弱点、足の弱さなどを見事に取り除いてまるで強靭な猛獣の如くにしあげている。並んで登場するシーンは画角、配置ともベスト。小津安二郎の人間、道具の配置へのこだわりのように、この登場シーンはそれぞれの位置関係、観客からの視点など徹底的に計算されて場の雰囲気を作り上げている。このシーンは素晴らしい絵であり写真だ。

《全然動かないスターデストロイヤー》
なんでもかんでも大きく、大きくすればいいってもんじゃないと思うが、今回の作品でメガ・スターデストロイヤーというやたら横にただ長いだけのような全長60kmとかいう設定の巨大艦船が出てきた。たしかにデカさに凄いなぁとは思うのだが、これただ浮かんでるだけ。そしてもっと悪いのは、いままでのシリーズで帝国軍の圧倒的な力の象徴でもあったスターデストロイヤーが相対的にちっちゃくなってしまって、後ろの方にこれまた浮かんでるだけ。ほぼ戦闘、攻撃にも参加してない。「なんだよ、スターデストロイヤー全然動いてないじゃないか」とスクリーンを観ながらイライラ憤り。今回の作品からファースト・オーダー・ドレッドノートなるスターデストロイヤーの2.5倍、19kmもある新艦船も出てきているということだが、メガ・スターデストロイヤーがでかすぎてこのドレッドノートもまるで目立たず。というかこういう馬鹿みたいにデカイ船をわざわざ設定しちゃったために、旧3部作のEP4冒頭で、あのスターデストロイヤーがドーンと出てくるあの巨大感にのけぞって驚いた体験がちゃかされてしまった。正直意味なしというくらい大きさだけを強調した今作品の船艦のせいで、過去の作品が持っていた素晴らしい映像体験やイメージまでもぶち壊してしまったといえるだろう。これはSWファンとして声を大にして非難する! 

《ポーグはただのおちゃらけキャラだったのか》
可愛らしい姿で公開前から注目されていたポーグ。ファルコン号でチューイと一緒にコックピットにいる映像などからも、このちっちゃくて可愛いキャラがどういう力をもっているのだろう。チューイと一緒にファルコンを操ってなにかもの凄い活躍をするのだろうか? などと想像していたら、ただ単に可愛いだけのおちゃらけキャラだった。重力がかかって窓にぎゅ〜っと押し付けられるシーンだとかは笑えたが、完全にディズニーのキャラ売り戦略の部品というだけだったとは。もうフィギアやぬいぐるみを売るためだけに追加したキャラという魂胆がミエミエでどうしょうもない。それとも次回作でなにか活躍するシーンでも加えられるのかな? そうでないとあざとすぎるもんな、このキャラは。それでもイウォークやジャージャービンクスよりは良いって? 確かにそうか・・・・(-_-;)

スターウォーズに燃料切れの話はダメダメだろう》
宇宙の話はねぇ、色々あるけけど、それをやっちゃいけない、それは当然のこととして受け入れた上で観てないとどうしても辻褄合わなくなる部分は出てくる。1番はっきりしてるのは爆発の音。宇宙じゃ音しないでしょ、ドーッカーンとかね。でもそれは目をつぶって見てるわけだし、音がしなかったら映画としてやはりつまらない。(キューブリックは音を消したけど)、同じくこんな巨大船艦で食料はどうしてるの、水はどうしてるの、空気は・・・そして燃料は?? イオンエンジンは、ハイパースペースドライブは・・・いろいろ未来の技術が開発されて現実世界のように燃料に煩わされることはほぼなくなっているという仮定の上で宇宙物の映画をみんな見てるわけで、燃料どうしてるんだろう、こんなに飛べるはずないだろう、嘘だ!と言ってしまったら全部話が台無しになってしまう。だからそういった現実世界的な制約は取り除かれているとう仮定でSF映画はみんな観ているわけなのに・・・燃料がもちません、後何時間でなくなります・・・ていうのをストーリーにいれてしまうのは、大大大失敗、失策なのだけどねぇ。監督や脚本家はこれだけ素晴らしくまとまったストーリーを作り上げたのに、その部分は気が付かないのか? それとも話を作り上げる発想力が足りなくて、つじつま合わせで燃料不足をもちだしたのか? 何にしてもダメダメ。

《ハイパードライブで敵艦に神風アタックもダメだろう》
これも、今回やっちゃったら、今までだって危機に陥ったときにただ撃ち落とされるんじゃなくて、ハイパードライブで突っ込めばスターデストロイヤーもやっつけられただろう・・・と思うよねぇ。ホルド提督がカミカゼアタックでメガ・スターデストロイヤーに突っ込み爆破するシーンは少しウルウルきたけれど。

ハイパースペース・トラッキングシステム》
ハックス将軍が「奴らに紐を付けておいた」とするハイパースペースを超えても相手を追跡出来るというシステム。これに対してフィンとローズが「奴らの追跡システムを破壊するのよ」というのが物語の大事な筋になっているのだが・・・なんで、追跡されてるって分かったら、本体の追跡システムを壊そうということになるのか? 相手の追跡システムを解除しない限り、永延に後を付けられてしまうと考えるんじゃなくて、普通に考えれば自分たちの居る船に何か追跡システムに信号を送る装置が付けられている、それを探して壊そうと考えるでしょ。つまり発振器、ビーコンがどこかにあるって考えるのが当然なんだけど。。。sらにおかしいのは、レイには居場所がわかるようにビーコンを持たせてる・・・ハイパースペース超えてルークの居る星にいってるのに?? んー、もうこういう部分でで突っ込み所満載なんだよなぁ。いや、全体的に脚本の出来は素晴らしいのだけれど、サラーッと見ていると粗にはあんまり気が付かないんだけど、よく考えると、監督や脚本家達が“よく考えていない”ところがあれこれ見えてくるんだよなぁ。大体にして30年以上前の設定となる『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』でオビワンが逃げるジャンゴ・フェットのポッドに追跡用の装置を投げつけてくっ付けるシーンがあるじゃない。てことは、ずっとまえからそういうシステムは出来ていたんじゃないの? とか言いたくなるんだよね。

コードブレイカーの話は伏線が回収されていない》
マズ・カナタがファーストオーダーの暗号破りはこの目印を探せ!といって示した花のバッジみたいなやつ。カジノでその目印を付けてた奴はあれ、誰なの? デル・トロ扮するDJが実はあの目印を付けてるやつにだまされて監獄に入れられた、というなら話もまあ繋がるが、あの目印に関しては映画のなかで結局何のお話もなし。伏線がまるっきり回収されず投げ捨てられてる状態。今回の映画公開版は上映時間153分と現状でも長尺だが、監督のライアン・ジョンソンが完成版から50分近くをカットして劇場公開版にした、未公開部分はブルーレイに収録するなんてことを言っているので、ブルーレイになったところで、あれこれつじつまの合わないところや、なんかここが変だという部分が分かってくるのかもしれない。それにしても、2時間33分もありながら話として???と疑問に思った所が何箇所かあるので、この劇場公開版はディレクターズカットじゃなく、短縮版という扱いになってしまう可能性もある。ロード・オブ・ザ・リングのときも同じようなことやってたな。これもソフトを売るためのあざとさに思えるが。
いきなり出てきたけどマズ・カナタが「労使交渉やってるんだよ」といって銃撃戦してるのはちょっと笑った。マズ・カナタも不気味な老女じゃなく、なんかヨーダ的なウケ狙いキャラにしようとしてるのかもしれないが。

《毎度のことだがシスってあっさり殺られる》
ファーストオーダー最高指導者スノーク。フォースのダークサイドを使い手、シス。だけど・・・あっさり殺されるよなぁ。それだけ強いのに、人間の心も読めるのに・・・。真っ二つにされるというのはお約束をきちんと踏襲してるが、それにしてもなんかあっさり過ぎ。でも考えてみれば、EP1でのダース・モールもあっさり、あれぇ〜という感じで真っ二つ、いとも簡単に殺られた。ドウーク伯爵もあっさり首を落とされるし、絶対勝ち目なさそうだったパルパティーンは反応炉に突き落とされて死んじゃうわけだし、シスじゃないけどグリーパス将軍も、もの凄い強いという話だったのに、オイオイというような情けない殺られ方で死んじゃったし、スター・ウォーズに出てくる悪の皇帝やら支配者、将軍・・・なんか邪悪でもの凄い強そうな設定なのに、ぜんぶあっさり殺られてる。(ダース・ベイダーだけは例外?)ことさら今回のスノークの殺られ方って、余りに簡単すぎないか? なにが最高指導者でなにがシスなの、どこが邪悪でどこが強いの? と思わずにはいられない。

《レイは一体どうして強いフォースを持っているのか》
カイロ・レンがダークサイドに堕ちるきっかけとなった話は巧く出来ていた。ルークがその原因だったとはかなりの驚きであり衝撃的であった。しかしなぁ、ダース・ベイダーの息子であるルーク、双子の娘の子だから孫にあたるベンことカイロ・レンで、カイロ・レンがルークを押しのけてジェダイ寺院を崩壊させるほどのフォースを持っていると言うのはイマイチ納得がいかない。母親であるレイアがダース・ベイダーの娘なのだからスカイウォーカー家の血筋を引いているとしても、母親も父親であるハン・ソロジェダイにはならなかったし、レイアのフォースが特に強かったというわけでもないんだが。そしてそれ以上になぜレイは他のだれよりも強いフォースを持っているのか? この点に関してはなんら答えが示されていない。レンとレイの会話ではレイが両親から見捨てられたただの娘だという話レイがするわけだが。カイロ・レンとレイの会話のシーンです。カイロ・レンがレイに「お前の両親は何者でもなく、ジャクーでガラクタを回収していた夫婦ですでに死んでいる。お前は見捨てられたのだ」と衝撃の事実が告げられたが、じゃあなんでレイはあんなに強烈なフォースを持っているのか? 

ハン・ソロは本当に死んだのか?》
これもまたレンとレイの会話でだが、レイが「あなたは父親を殺したのよ」と言ったところでレンが「本当にそうおもうのか」というようなことを言っていた。ん??? 確かに「フォースの覚醒」でハン・ソロライトセーバーで体を射抜かれ、船艦の底へと落ちていくのだが、実際に死んだ様子の描写は一切なし。葬式もなし。でもレイア将軍が夫であるソロの死を感じたような部分はあった。でも完全に死んだという描写はなかった・・・さてここもどうなるのか?

《ルークのホログラムはダメでしょ》
もうさぁ、あれをやったらなんだってオッケーになってしまうじゃない。( ´Д`)=3 それとラストでレジスタンスの指輪を付けた子供がフォースを使うような場面があり、次回作への希望につながっていくようなシーンがあるが、なんかこれもわざとらしく、よくよく使われてきたような子供っぽいシーン。まるでディズニーの子供向け冒険物語的な終わり方だ。

[:W316][:W309]

と、ここまで書いてきたら、否定的な所感ばかりになってしまった。この作品を観終えたときには「凄い完成度だ、スキがない、凄い映像だ」と溜息を付くほどにどっぷりスターウォーズの世界に取り込まれ、凄い凄いと感嘆し、かなりの満足感に浸っていたのだが・・・時間が立つに連れて、いろいろなシーンを振り返って考えるに連れて、どんどんと疑問や不満、納得の行かないところが出てきた。

映画の完成度は高い、でも何かスターウオーズ的でない変なものを感じる。商業主義、ディズニーの金儲けの道具的になった部分も大いに感じる。少なくともこれは絶対に言えることだが・・・

「帝国の逆襲」を超える最高傑作!・・・というのは違うな。

当初に予想していた展開は見事にほとんど外れた。カイロ・レンがまるで母親であるレイア将軍を攻撃するかのような予告編の作りや、ポスターで示されたダークサイドに落ちたようなルークの姿も、言ってみれば全部ブラフでありあったな。まるで思っていたこととは違った驚きの展開だったし。でも、その驚きとスター・ウォーズでこれまで感じてきた驚きはちょっと違う。やはり「帝国の逆襲」での「私はお前の父親だ」に勝る驚き、衝撃は無い。自分が映画に求めているものの一つである「やったー!」という爽快感、感動、気持ちよさというものは残念ながらなかったといえるだろう。改めて思い起こすと今までのスター・ウォーズ・シリーズのテイスト、雰囲気から少し違う方向に映画が向きを変えている感じがする。それが次のエピソード9でどうなるか? 新たな3部作まで作られるということなので、ディズニーにしてみればスター・ウォーズはやはり最大のドル箱であろう。

公開から今日で一週間。アチコチに書かれている考察、感想、批判、賞賛などを読んでいると、一回の観賞では分からなかった、とらえきれなかった細かな部分を色々と説明してくれているサイトも多々あり、凄いなぁと思う次第。もう少しあちこち読んだり見たりしてから、年内にもう一回観賞しようかなと考えているところ。但し、普通なら二回目は日本語吹き替え版で観賞するのだが、日本語の予告編やCMなどで観るとどうも今回の吹き替えはレイの声にしても喋り方にしてもなんとも軽薄で脱力してしまう雰囲気なので、二回目も字幕で見るかもしれないな。